東京商工リサーチ 蒲谷常務に聞く
事業拡大を目指す企業にとって、取り引き先の情報収集は必要不可欠。中小企業も積極的に販路開拓に取り組む時代にあって、国内・海外の企業情報を提供する企業信用調査会社に求められる役割は大きい。和歌山新報社を訪れた東京商工リサーチ(TSR)の蒲谷聖常務取締役・関西支社長にインタビューした。
――TSRの強みは。
蒲谷支社長 国内86カ所の事務所のスタッフが集めた148万件のデータを保有しています。海外企業のデータについても、われわれは2000年に世界最大手の企業信用調査会社、米国のダン・アンド・ブラッドストリート(D&B)と提携しました。現在、東南アジアを含めた全世界の企業情報2億4000万件をワンストップで提供できるサービスを整えています。
国内外に打って出ようとしている企業の方に、たくさんのデータの中から、必要な情報を取り出していただけます。与信管理、業績拡大のための新規開拓用データなど、攻めと守りの情報を構築し、企業の皆さまに活用していただける環境を整えています。
――県内の企業データはどのくらいあるか。
蒲谷 1万3000件台になりました。税務統計からみた法人数は、ペーパーカンパニーも含め1万7000社といわれているので、カバー率は高いと考えています。
――県内の倒産動向は。
蒲谷 ことし1月から6月の上半期の倒産件数は49件で、過去10年間で2番目に少ない結果となりました。全国・近畿においても低水準となり、基本的に減少傾向にあるといえます。しかし、一方で高度経済成長期を生き抜いてきた中小企業の経営者の多くが高齢者となり、会社を休廃業、解散するケースは3倍以上発生しています。
――東京一極集中といわれる中、和歌山のような地方の企業の生き残りの鍵は。
蒲谷 自分たちの技術やアイデンティティを見直してはどうでしょうか。商機、販路はアイデアや決心で広げることができます。業界にもよりますが、県内でも東京の企業と取り引きを拡大している企業もあり、今後、東京に出先を設ける会社もあると聞きます。また、インターネットの活用、ホームページの充実などにより、県外はもとより海外企業と取り引きを拡大している企業もあります。県内の活動が中心の業界でも、既存のやり方を変えることで新しいビジネスチャンスがつかめるはずです。いずれにせよ、経営者の力量が試されるところだと思います。