「きのくにレザー」ブランドを発信

和歌山は兵庫、東京と並ぶ日本の製革業の3大産地に数えられ、その歴史は江戸時代にまでさかのぼる。職人の長年の技術と知識により高品質な皮革を生み出しているが、ほとんどが県外で製品化されるため、一般に「和歌山の皮革」の認知度は低いのが現状。そこで、生産から製品化まで県内で一貫して行い、和歌山ブランド「きのくにレザー」として国内外に広めようという取り組みが始まっている。

声を挙げたのは、和歌山市堀止西のレザーファッションブランド「TERRA(テラ)」の代表で革職人歴30年の藤井康守さん(48)とデザイナーの智砂子さん(39)の2人。智砂子さんは「各地の見本市などに足を運び、国内外の皮革に触れる中で和歌山の皮革の良さを実感してきた。色や光沢などの工夫でイメージを変え、和歌山を皮革のまちとしてもっと知ってもらいたい」とブランド化への思いを話す。

「テラ」では、昨年度から県の「わかやま地場産業ブランド力強化支援事業」による補助を受け、県製革事業協同組合の協力を得ながら、ブランド化の取り組みを進めている。

きのくにレザーは、県内で最終加工していることや、耐光性などに基準を設け、全てクリアした製品をブランドとして認定する。認定されると、きのくにレザーのロゴが入った認定マークを付けて自社製品を販売することができる。

きのくにレザーの販売拡大に向けて、「テラ」は、全て一点物のブランド「AGAPE(アガペ)」と、姉妹ブランド「Ceil(ケイル)」を展開。ブランド化に賛同した取り扱い店「グラン・ジュテ」(同市今福)はフローラル柄を特長とする製品、「ビジュー・ラ・コケット」(同市雄松町)は革アクセサリーなどで展開を図っていく。

智砂子さんは「革素材は、部位によって違う特徴を生かさないとしわなどの原因になる。扱いには確かなノウハウが必要で、キャリアがなければ難しく、人を育てなければいけない」。藤井さんは「和歌山の皮革産業が元気を取り戻してくれればうれしい。そのためにも自社のブランドが世界的に認めてもらえるようになれば」と意気込みを話している。

今後は、個展や展示会、ワークショップを開くなどのさまざまな活動を通じ、「きのくにレザー」のブランド力向上を目指していく。