黒潮を通じた結び付き 海に共通する地名の数々
前号では、「勝浦」の地名を持つ千葉県勝浦市、徳島県勝浦郡勝浦町、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町の3市町が協力した「勝浦ネットワーク」による結び付きを取り上げた。他にも千葉と和歌山では共通する地名が存在する。今週は地名の由来について深堀りして紹介したい。
「白浜」や「勝浦」はすでに紹介の通りだが、「めら」という地名がある。千葉県南房総市の旧白浜町に隣接する千葉県館山市に「布良(めら)」という地域があり、和歌山県田辺市の天神崎近くには「目良(めら)」という地域が存在する。漢字は異なるが読みは同じだ。
地元の観光案内所のスタッフに尋ねると、「両県に共通する地名が多いのは黒潮に関係するようです。漁業が盛んで技術力も高かった和歌山から、同様の環境で漁ができることを魅力に、漁師や商人が移り住んで来たと聞いています。故郷を懐かしんで付けたのかもしれません」という。
確かに、千葉県内には「熊野」や「桃山」といったような山に関係する地名は見当たらないし、千葉県九十九里の郷土料理としてサンマやイワシのなれずし(くさりずし)があったり、南房総市では太地町と同様に捕鯨が行われている。いわゆる「くさりずし」は関東では珍しい存在。黒潮の海流を通じ、千葉と和歌山の間に強い結び付きがあることは明らかだ。
館山市や勝浦市からさらに北上したところに銚子市がある。この街には、和歌山から伝わったとされる文化や歴史が根付いている。次号で紹介したい。
(次田尚弘/千葉)