来月から移動スーパー サンキョー

 高齢者など日常の買い物に困っている人の自宅前まで、地元スーパーの商品を軽トラックで届ける移動スーパー「とくし丸」が全国で広まっている。「見て、触って、感じて、選んで」という買い物の楽しさを届けるだけでなく、高齢者の見守り活動も行い、高齢化が進む中、新たなビジネスモデルとして注目されている。県内でも来月から始まる。

 和歌山市と紀の川市内にスーパー3店舗を持つ「サンキョー」(本部=和歌山市市小路、石原達夫社長)が、移動スーパーを運営する徳島市の会社とフランチャイズ契約を結び、来月から和歌山市園部の鳴滝団地周辺などで始める。

 提携スーパーが商品の調達や販売のノウハウなどを提供し、販売パートナーと呼ばれる個人事業主が販売する仕組み。

 一軒一軒を回り、希望者宅の巡回ルートを作成。冷蔵庫を積んだ軽トラックに生鮮食品、調味料、菓子など300~400品を載せ、希望者宅を週2回のペースで訪問する。

仕事を通じて貢献 サンキョーは、競合店の進出などから第1号店「鳴滝店」を5年前に閉店。団地の住民から「なくなると困る」という声を受け、楠見店(同市市小路)までの送迎バスを運行している。しかし、バスには定員数があるため、「乗りたいけど、乗れない」といった人も少なくない。

 昨年春、石原社長(69)は県外の同業者が移動スーパーを始めたことを耳にし、見学に行った。高齢者らの笑顔を目の当たりにし、気持ちが動いた。同年10月、提携先の会社「とくし丸」の住友達也社長と会った際、「買い物袋を持って100㍍歩けるか」と尋ねられた。実際にハクサイや大根を入れた買い物袋を両手に持って歩いてみると、痛めている自身の足が痛くなり、短い距離であってもつらいことが分かり、気持ちは固まった。

 住友社長は、過疎地だけでなく、市街地でもスーパーの郊外進出など地元商店街の衰退で、買い物が困難になっている状況を知り、移動スーパーのシステムを考えた。常連客が顔を出さないのを不審に思って民生委員に連絡し、孤独死しているのを発見したり、オレオレ詐欺を未然に防いだり、見守りやコミュニティーの場にもつながっている。

 石原社長は「一人住まいの高齢者の手助けを、スーパーという仕事を通じてできればという気持ちが根底にある。車の台数が少しずつ増え、客に喜んでもらい、地域の人とのつながりを深めていければ」と話している。 

「私たちが回ります」と従業員

「私たちが回ります」と従業員


イメージイラスト

イメージイラスト