「那智の扇祭り」重要無形文化財指定へ
国の文化審議会(宮田亮平会長)は16日、全国で新たに4件を重要無形民俗文化財に、2件を重要有形民俗文化財に指定するよう、下村博文文部科学相に答申した。県内からは、熊野那智大社(那智勝浦町)の「扇祭り」を重要無形民俗文化財に指定するよう求めた。近く答申通り指定される予定で、これにより県内の重要無形民俗文化財は6件となる。
県教育委員会文化遺産課などによると、「那智の扇祭り」は熊野那智大社の祭礼として、毎年7月14日に行われている。起源は定かでないが、江戸時代以前から行われてきたとされる。
滝の形を模した高さ6㍍の12基の扇神輿(みこし)が、本殿前から那智の大滝を目指して渡御する。燃え盛る大たいまつが先導することから「那智の火祭り」の呼び名でも広く知られている。
浄化再生や秩序回復がもたらされるといわれ、豊穣が祈念される。昭和35年には県の無形民俗文化財に指定された。
熊野信仰を背景に、熊野の自然と文化が一体となって伝承されてきた大規模な祭礼であり、太陽や水などを神聖なものと捉える自然崇拝的な要素が強く、日本の固有信仰や祭礼行事を理解する上で重要であると評価された。
熊野那智大社では、この扇祭りで奉納される民俗芸能「那智の田楽」が、国の重要無形民俗文化財(昭和51年)、ユネスコの無形文化遺産(平成24年)に登録されている。
昭和35年には「那智の火祭」として県指定を受けたが、今回の答申を機に、地元で古くから呼ばれてきた本来の「扇祭り」に戻し、保存会の名称も「那智の火祭保存会」から「那智の扇祭り保存会」に変更する。
保存会の会長を務める同大社の朝日芳英宮司(81)は「聖地熊野の祭りや文化が和歌山の基盤として認められたということ。自然の恵み、神の恵みに感謝するという信仰の原点に立ち返り、『那智の扇祭り』として指定を受けるのは大変喜ばしい」と話している。