海南の橋爪さん県名匠に 漆芸文化に貢献

伝統工芸品などの技能を保持し、技術文化の発展に功績がある人をたたえる平成27年度「県名匠表彰」に漆芸家の橋爪靖雄さん(80)=海南市=が選ばれ、25日に県庁で表彰を受けた。漆工芸に半世紀以上携わり、蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)などの伝統的な手法を踏まえた上で洋画風の図柄を取り入れるなど、先駆的な制作に取り組み、人々を魅了する数多くの作品を生み出してきた。

橋爪さんは漆芸家だった父・義雄さんの影響を受けて、23歳の時に漆芸家の道へ進み、上京して伝統的な技法を学んだ。帰郷した昭和37年に第5回日展で初入選し、以降も入選を重ねた。洋画風の図柄を取り入れた作品は全国的に評価が高く、同59年の第16回日展の工芸部門で県内初となる特選を受賞。同54年度には県文化奨励賞、平成12年度には文化功労賞を受けている。

代表作に千葉県の八富成田斎場エントランスホール、和歌山市のホテルアバローム紀の国エントランスなどの漆壁画がある。近年では、同20年から4年をかけて、海南市の浄國寺本堂左右両余間の天井に「四季の草花と星座」をテーマにした「蒔絵天井画」を完成させた。

表彰式には来賓として海南市の神出政巳市長、藤山将材県議会副議長らが出席し、拍手で迎えられた橋爪さんに仁坂吉伸知事が賞状と盾、副賞を授与。仁坂知事は「紀州漆器は県を代表する伝統産業。職人が長い年月をかけて発展、継承してきた技法により作り出される作品の美しさは人を魅了し続ける。この貴重な伝統産業は後世につなぐべき文化であり、財産」と述べ、橋爪さんをたたえるとともに、後継者育成などの活動に期待を寄せた。

橋爪さんは「過分な賞を頂き、本当にうれしく思います。これまで援助、協力していただいた方々のおかげだと思います。これからもできる範囲で仕事をしていきたい」と喜びをかみしめていた。

表彰を受ける橋爪さん㊨

表彰を受ける橋爪さん㊨