危険箇所など参考通知 総務省の世界遺産調査
総務省は、全国で実施した世界文化遺産の保存や管理に関する調査の結果をまとめ、文部科学省と環境省に改善を求める勧告を行った。県内の「紀伊山地の霊場と参詣道」に関しては、熊野参詣道・大雲取越の色川辻付近(那智勝浦町)で落石の危険性がある岩を確認し、管理する同町に、自主的な改善を期待する「参考通知」を併せて行った。同町生涯学習課は「春の登山シーズンに入るまでに、斜面を傷つけないよう岩を削り、安全を確保したい」としている。
調査は、世界文化遺産の持続的な保存や管理、活用を進めるため、国や地方公共団体などの取り組みの実施状況を調査し改善を図ろうと実施。総務省が国内にある14の世界文化遺産を対象に調査した。県内の調査は同省和歌山行政評価事務所が担当し、平成26年12月から27年3月にかけて現地調査や自治体担当者への聞き取りを行った。
関係2省への勧告は今月15日付。世界文化遺産の保存や管理について総務省は直接、地方公共団体に改善を求める権限はないため、「参考通知」はあくまで、関係自治体に調査結果を示すことにより、自主的な改善を期待するもの。
同事務所の調査のうち、勧告に反映されたのは落石の危険や倒木、落書きなどの毀損(きそん)事例。落石の危険に関しては、職員が昨年1月15日に現地を調査したところ、参詣道から約3㍍上の斜面に、直径約1㍍の岩が露出しているのを確認。土中に埋まっていたものが、土砂崩れで露出したとみられている。
来訪者の安全が確保できていないとして同町に報告。町教委は11月17日、応急処置として参詣道の両端2カ所に工事用の柵を設置し「通行注意」「頭上注意」と書いた紙を掲示し、注意喚起した。
危険箇所の確認から10カ月後の対応になったことについて、生涯学習課では「県や業者と、重機を入れた露出部分の撤去を検討する中で、来訪者への呼び掛けが遅くなってしまったことは大変申し訳ない。岩が撤去されるまではパトロールを強化し、安全強化に努めたい」としている。
また、県内の参詣道の石畳に「山本」(1文字約7㌢×7㌢)という文字が彫られているのが見つかった。文化財に毀損があった場合、文化財保護法により管理者は文化庁に届け出る義務があるが、文化庁は把握していなかった。
平成23年の台風の影響と見られる那智勝浦町の中辺路の倒木は、昨年の春に除去を完了している。
その他、世界遺産に登録されていない区間も登録区間と誤って理解されてしまう可能性がある広域図が、県のホームページや新宮市、那智勝浦町作製のガイドマップで計5件掲載されていた。登録されていない紀伊路や、大辺路の未登録区間も連続した線で紹介され、全区間が登録されていると捉えられかねないとしている。
同事務所はこれに対しても参考通知を出し、自主的な改善が図られるよう期待している。