伊勢路旅⑤三重県熊野市(1)
今週は南牟婁郡御浜町のお隣、熊野市を紹介したい。熊野市は人口約1万8000人の市。市の東部は熊野灘に面し、西部は和歌山県との県境に接する。
和歌山県との境は熊野川と北山川で、本宮や北山村のすぐ対岸に位置するため和歌山との結び付きが強い。熊野灘に面する七里御浜は「伊勢路(浜街道)」、熊野川は「中辺路(川の参詣道)」にあたることから、市の両端が熊野古道に面することになる。海・山それぞれの魅力に恵まれた熊野市を、まずは和歌山県境側から紹介したい。
和歌山の観光名所としてもなじみ深い瀞峡(どろきょう)は、和歌山県・三重県・奈良県の山々と、その境を流れる北山川が織りなす大渓谷。青く澄んだ空、深い緑の山々、壮大な断崖、コバルトブルーの川のコントラストは実に美しく、四季によってその表情を変える姿は見る者を圧倒させる。
熊野交通が運営するウォータージェット船の立ち寄り地となる「田戸乗船場」近くは、和歌山県・三重県・奈良県の県境が交わる地点で、三県境(さんけんきょう)と呼ばれる。三県境は43都道府県に存在するが、和歌山県の北山村全域と新宮市の一部が飛び地であるため、この3県で構成される県境は合計5カ所あり、全国的にも珍しい。
田戸乗船場の河原から山へと続く階段を数分上がると、三県境を記す看板があり瀞峡を一望できる。川の水面より高い目線で見る瀞峡の姿は、絵はがきにしたいほど美しい。
田戸乗船場へはウォータージェット船でのアクセスが便利。約20分間の下船休憩時間に訪れるのもよし。車でのアクセスは、奈良県側の瀞郵便局(十津川村神下)が目印。3県が織りなす大渓谷の造形美にふれてみては。
(次田尚弘/熊野市)