歴史と景観を生かそう 和歌の浦シンポ

国の名勝・和歌の浦地域の資源を生かしたまちづくりについて考える、和歌山市主催のシンポジウムが13日、同市の和歌の浦アート・キューブで開かれた。講演会や地元市民団体による活動報告があり、尾花正啓市長やまちづくりに携わる行政関係者、市民ら約120人が今後の活用について考えた。

本紙コラム「こだわり仕事人」でもおなじみの建築家・広谷純弘さんが「つながる建築」をテーマに講演。玉津島保存会の渋谷高秀さんが、同会や「水軒の浜に松を植える会」「トンガの鼻自然クラブ」の、地元3団体の活動内容を報告した。住民の長きにわたる地道な整備や保護の活動が実り、名勝や史跡指定などにつながったことを紹介し、「地域に対する熱い思いが成果を生んでいった」と話した。

歴史や景観を生かしたまちづくりをテーマにしたパネルディスカッションもあり、広谷さんや渋谷さん、建築士の中西重裕さん、同市の南方節也都市計画部長が登壇。和歌山大学観光学部の永瀬節治准教授をコーディネーターに意見交換した。

中西さんは和歌の浦の景観について「対岸から見る山並みの稜線の美しさを損なわないようにすることが重要」と指摘。周辺に残る歴史的価値の高い建造物や、地元住民で清掃が続けられている公衆トイレの事例などを紹介した。

また、地元での継続した取り組みについて渋谷さんは「全ては人が重要。文化財は指定されている限り永遠のものだが、人はそうでない。和歌浦では、今いる人が目の前のことに連携して取り組むことでつながり、達成感を得ながら活動が続けられている」と語った。

今後のまちづくりを進める上で重要な点については、広谷さんが「和歌浦では、まち自体を博物館にするような感覚が良いのでは。デザイン感の統一が大事で、国や県、市がつくるものがバラバラでは駄目。きちんと話し合ってガイドラインを作ることが基本になる」と提案した。

和歌浦のまちづくりについて意見交換するパネリスト

和歌浦のまちづくりについて意見交換するパネリスト