大飯盛物祭が復活 貴志川で11年ぶり奇祭
紀の川市貴志川町国主の大國主神社(山本幸泰宮司)の奇祭「大飯盛物祭」が3日、11年ぶりに開かれた。串に刺した6000個の餅を取り付けた手作りの盛物を、約800人が行列をつくりながら旧貴志川支所から同神社まで運んだ。伝統的な祭の復活を一目見ようと、沿道にはたくさんの見物客が集まった。
同祭は、およそ700年の歴史を持ち、巨大な盛飯を引く様子は、全国的にも珍しい。神社にまつわる伝説によると、神社の前の國主淵に生息する龍蛇にいけにえとして娘を一人差し出していたが、娘の代わりに大飯を奉納したというのが祭りの始まりとされる。
盛物は、高さ約5㍍、直径約3㍍。熱気球様のものを竹軸で作り、竹串に刺した餅を表面に取り付けて薦(こも)で覆う。同祭実行委員会(柳瀬森哉委員長)はことしに入り、本格的な準備を開始。竹切りやしめ縄作り、餅つきなどの作業を進めてきた。
出発前、同支所では、安全に神社まで運べるよう祈願する修祓式が行われた。行列には地元の市立中貴志小学校5、6年生や稚児、地区役員など約800人が参加。獅子舞やみこし、酒などを積んだ屋形船が順番に行列をつくり、最後尾に盛物が並んだ。
行列は「盛物節の歌」を口ずさみながら、神社までの2㌔ほどを2時間以上かけて練り歩いた。神社につながる急勾配の坂を上り切った行列は、境内で到着を待っていた大勢の見物客の大きな拍手で迎えられた。
境内では、みこが舞を披露。盛物に巻き付けた薦が外されると、再び大きな拍手と歓声が沸き起こった。奉納神事が執り行われ、餅を奉納。柳瀬委員長(77)が「大勢の皆さんの前で、盛物を奉納できた。この祭が『よかったね』と言ってもらえれば、本当にうれしく思う」と祭の成功を振り返り、幕を降ろした。
山本宮司(58)は「事故もなく無事奉納することができた。これまで約1年かけて準備をしてくれた皆さんのおかげです」と笑顔で話していた。