伊勢路旅⑮三重県北牟婁郡紀北町(2)
前号では三重県紀北町の旧・海山(みやま)区にある、美しい石畳が特徴の熊野古道・馬越(まごせ)峠と、古道歩きの起点にふさわしい「道の駅海山」について取り上げた。
今週は、馬越峠から熊野古道を伊勢方面へ進んだ旧・紀伊長島区にある始神(はじかみ)峠道と、その近くに整備された紀勢自動車道紀北パーキングエリアを紹介したい。
始神峠道は、旧・海山区と旧・紀伊長島区の境に位置する峠道。石積みがされただけの素朴な道だが、展望台は熊野灘とそこに浮かぶ「紀伊の松島」と呼ばれる島々を一望できるスポット。
この「始神峠道」の名前を用いた地域振興施設が、紀勢自動車道紀北パーキングエリア内にある。その名は「始神テラス」。紀伊長島ICと海山ICのほぼ中間地点に位置し、平成27年6月にオープン。高台に位置することから津波による浸水の危険がなく、住民や自動車道利用者の一時避難場所としての機能も備え、救援・復興活動の拠点としても期待されている。
始神テラスを訪れると、まず、紀北町産の尾鷲ヒノキをふんだんに使ったおしゃれな造りが圧巻。建物に入ると大きな周辺地図や観光パンフレットが設置された案内コーナーがある。2階建ての建物の1階部分には、熊野灘で取れる魚介類や干物、すし、野菜など、地元の食材を中心に販売する物産店と、それらの食材を使った料理が食べられるレストランが入居し海鮮丼や地鶏の天ぷら丼を求める観光客らでにぎわう。地元の新鮮な食材の旨みと、ヒノキの香りで満たされた温かな空間が、訪れる者を和ませてくれる。
合併前の双方の町の魅力を、紀勢道でつながる新しい町の中央で発信する施設。紀勢道利用の際はぜひ立ち寄ってみてほしい。(次田尚弘/紀北町)