伊勢路旅⑰三重県志摩市
伊勢志摩サミット(5月26日~27日)を前に、これまで「熊野古道・伊勢路」周辺の魅力を16回にわたり取り上げてきた。伊勢路は先週紹介の紀北町から北上を続けるが、今週からしばらくは伊勢路から少し離れ、サミット会場となる賢島(かしこじま)周辺の魅力をクローズアップしたい。
観光地として名高い伊勢志摩は、かつての伊勢国と志摩国の地域で三重県の南東部に位置し、現在は伊勢市・鳥羽市・志摩市の3市がそれにあたる。賢島は志摩市のほぼ中央に位置し、英虞(あご)湾に浮かぶ周囲約7㌔、人口100人余りの島。
島の中心部には近鉄賢島駅があり、大阪難波や京都、名古屋方面からの特急列車が行き交う。本州からは、近鉄電車か、線路と並走し国道167号に架かる全長10㍍ほどの賢島橋、あるいは、賢島大橋(全長153㍍)を使えば容易にアクセスできる。
筆者はこれまで幾度も賢島を訪れてきたが、このコーナーの取材をするまで本州と海を隔てた島であることに気付かなかった。かつては、干潮時に徒歩で渡ることができたため「徒越(かちご)え島」と呼ばれ、それが転じて「賢島」となったといわれている。
賢島は昭和初期までは真珠の養殖小屋が立つだけの静かな無人島。昭和3年ごろ「海の軽井沢」をつくろうと近鉄などが中心となり開発が進み、本州と賢島間に賢島鉄橋を架設。昭和4年に賢島駅が開業。賢島駅より先には貨物専用の真珠港駅があったとされる。
昭和21年、賢島が伊勢志摩国立公園に指定されたことを契機に、洋風建築のホテルを建設する動きが起こり、昭和26年に志摩観光ホテルが開業。今回サミット会場となるホテルの前身である。次週に続く。
(次田尚弘/志摩市)