食文化発信 赤間さん『おいしい雑草』出版

四季折々の身近な雑草をおいしく食べよう――。和歌山市加太の旅館「加太淡嶋温泉大阪屋 ひいなの湯」の調理長、赤間博斗さん(46)の著書『おいしい雑草 摘み菜で楽しむ和食』が20日、山と溪谷社から出版される。「摘み菜を伝える会」を主宰する平谷けいこさん(73)との共著。同社によると、身近な雑草の生態図鑑と解説、料理のレシピ、写真を紹介した日本初の書籍となっている。

赤間さんと平谷さんの出会いは7年前。野山などに生えている草を必要な分だけ摘み、食べるという先人の食文化、知恵を伝える活動をしている平谷さんが同旅館を訪れ、勤務してまだ間もない赤間さんがいた。平谷さんから加太の海岸に見られるハマウドやクサボケの実を紹介された赤間さんは、「日本的な香りを料理に使ってみたい。もっと知りたい」と思い、雑草料理に取り組んだ。

同書は、赤間さんが研究してきた雑草を使った本格的なレシピを、1年ほどをかけてまとめた。

取り上げている雑草は、タンポポやハコベ、トリアシショマ、コシャク、スミレなど「流通に乗らず、自分で摘まないと手に入らないもの」と赤間さん。「手間をかけずに食事ができる現代ですが、万が一流通などが止まったときに、昔から雑草を糧としてきたことを知っている人は強く、身も心も豊かに過ごせるのではないでしょうか」と話す。

日本の摘み菜、雑草文化は今や、インスタグラムなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて世界に発信され、その反響は大きく、台湾やイタリア、オランダなどでも関連イベントが開かれるほどという。同書も世界に向けての発信を意識している。

赤間さんは島根県出身で、実家は元料理屋。祖父母が万葉集研究で著名な日本文学者、犬養孝と交流があったことなどから、幼少期から日本古来の文化に親しみ、雑草で遊んだり食べたりした記憶もある。和食はきらびやかなものだけではない。「地元の旬の食品や伝統食材が体に良いとされる『身土不二(しんどふじ)』という言葉もあるように、日本に元々ある雑草文化を伝えたい」と赤間さんは話している。

同書はA5判、160㌻。25日午後7時半から、東京・お台場の「東京カルチャーカルチャー」で出版記念イベントが行われる。

完成した本を手にする赤間さん

完成した本を手にする赤間さん