伊勢路旅(22)三重県多気郡大台町
前号では、紀伊国と伊勢国が交わる町として、三重県度会郡大紀町の魅力にふれた。今週はお隣の「多気(たき)郡大台(おおだい)町」を紹介したい。
多気郡大台町は三重県のほぼ中央に位置する人口約1万人の町。町の中央部を県内で最長の河川「宮川」が流れる。上流域となる町の西部は大台ケ原山に程近く、標高1000㍍級の山々に囲まれた山村地域で吉野熊野国立公園に指定。夏には宮川の清流を求め、川遊びやアユ釣りの観光客らでにぎわう。中流域となる町の東部は茶畑や田畑が広がる農村地域。
この地域で収穫されるお茶を「伊勢茶」という。三重県はお茶の栽培面積、生産量、生産額が静岡県、鹿児島県に次ぐ全国3位であることをご存じだろうか。とりわけ、アミノ酸(うまみ成分)の一種であるテアニンを多く含む「かぶせ茶」の生産量は全国1位を誇る。「かぶせ茶」とは収穫の2週間前から茶畑に黒いネットをかぶせ、茶を成長させる栽培手法で苦みが少なくテアニンが豊富な茶ができるという。この他にも「煎茶」や「深蒸し茶」の生産が多い。
三重県内では北から順に「水沢(すいざわ)」「鈴鹿」「亀山」「大台」の4地域が伊勢茶の主要生産地となっており、大台町もそのひとつ。一年を通し温暖で降水量にも恵まれ「煎茶」や「深蒸し茶」などの緑茶の栽培が主となっている。
実際に大台町で収穫された伊勢茶を飲んでみた。コクと香りが濃厚で、二煎目、三煎目でも味の劣りが少なく、おいしくいただくことができた。
静岡茶と比べれば認知度は高くないかもしれないが、和歌山から遠くないところにある有数のお茶の産地。伊勢茶を見掛けた際はぜひ一杯お試しを。
(次田尚弘/大台町)