衛星使用の安否確認を実証実験 津波訓練
南海トラフ地震などに備え県は3日、本年度の「津波災害対応実践訓練」を県庁や海南市下津町塩津地区など県内各所で実施。6市町や自衛隊、国土交通省、海上保安庁、警察など41機関から計約1000人が参加し、人工衛星を使った安否確認サービスの全国初の実証実験をはじめ、迅速な初動対応と災害対応力の強化を図った。
訓練は、県南方沖でマグニチュード8・7、県内で震度5強~7の揺れを観測する地震が発生したと想定し、午前8時から始まった。
内容は、災害対策本部となる県庁南別館での総合統制室運営をはじめ、被害状況や孤立状況などの情報収集・伝達▽SCU(広域搬送拠点臨時医療施設)の開設・運営▽漂流者の捜索・救助▽倒壊家屋からの救出▽がれき除去などの道路啓開▽緊急物資の輸送▽津波避難と避難所の運営――などで、各地で同時並行で進められた。
従来の総合的な防災訓練は、関係機関が一カ所に集結し、観覧型で行われてきたが、県は平成23年の紀伊半島大水害や東日本大震災の教訓から、より実際の災害時に近い形態で実効性のある訓練を積むため、24年度から同時並行型に大きくかじを切った。
塩津地区の塩津小学校では、人工衛星を活用した安否確認方法「準天頂衛星システム衛星安否確認サービス」の実証実験が全国で初めて行われ、地元住民約90人が協力した。
同サービスは内閣府が平成30年度の運用を目指し、日本電気㈱(NEC)が日本の天頂付近を通る軌道を持つ人工衛星「みちびき」を用いたシステム開発を進めている。みちびきは測位機能の他、メッセージ通信機能を備え、大規模災害時には安否情報の収集や通信に活躍が期待されている。
海南市全域の防災訓練に合わせて実証実験は行われた。参加者はスマートフォンや携帯電話を使って避難所の情報を集約する管理端末に接続。電子機器の操作に慣れていない高齢者らは若者に教えてもらいながら、電話番号や名前、けがの有無などの安否情報を入力した。
携帯電話を持っておらず、夫の入力作業を見守っていた女性(64)は「夫も何回も入力の仕方を聞いていて難しそう。自分の携帯電話も必要になってくるのかな」と不安な様子。NEC準天頂衛星利用推進室の細井俊克室長(51)は「初めての人でも簡単に操作できるようにしないといけない」と課題を話し、「安否確認の新しい手法として活用できれば」と話していた。
県庁南別館では、県や自衛隊、国交省近畿地方整備局、海上保安庁、県警などの職員ら約30人が集まり、各訓練現場の地上、海上、空からリアルタイムで送信される映像を確認しながら、訓練全体の進行状況の把握、参加機関の連携や調整に当たった。
県災害対策課の酒井清崇課長は「訓練全体のマクロの視点では、各機関が無事にミッションをこなし、順調に進んだ」と成果を話し、各訓練現場で見つかった課題については今後、改善を進めていく考えを示した。