島精機に瓶子寄贈 根来寺根来塗の曙山さん

 岩出市の根来寺根来塗宗家、池ノ上曙山さん(56)は2日、㈱島精機製作所(和歌山市坂田、島正博社長)に根来寺根来塗の瓶子(びんず)を寄贈した。

 平成19年に和歌山市本町のフォルテワジマで「根来寺根来塗展」を開いた際、根来寺根来塗を広めるには、国内外から多くの来客がある同社に置いて見てもらうのが良いのではないか、との話を曙山さんが聞いたことをきっかけに、今回の寄贈が決まった。

 上品な艶と落ち着きのある朱色の瓶子は、胴体を大きく繰り込んだ形状の酒器。漆を塗る刷毛の跡を表現として残す「朱砂塗り」と呼ばれる中世の技法で仕上げており、今回の寄贈品は時価250万円相当。

 島精機を訪れた曙山さんは、島社長(79)に瓶子を手渡し、制作工程について説明。ケヤキの木を完成型の形状に削った後、瓶子の肩の線で一度横に切断して中をくり抜き、内面にも外側と同様に塗りなどの26の工程を施している。

 完成品は、欠けや割れがないため熱湯を注いでも問題がなく、漆の抗菌作用で器に入れた食品は傷みにくいという。

 曙山さんは「木器だからこそ、酒を入れても持ち上げられる。ぜひワインなどを入れて大いに使っていただきたい」と話し、島社長は「素晴らしい作品をありがとうございます。海外の方は日本的な作品を大切にされます。ワインを愛好しているので、早速使わせてもらいます」と応じていた。

瓶子を手に島社長㊨と曙山さん

瓶子を手に島社長㊨と曙山さん