終戦直前のトーチカ 梅原で野村さんら発見

終戦直前に設置されたとみられる旧日本軍のトーチカ(防御陣地)の遺構が和歌山市梅原の山中で28日、見つかった。鉄不足だった当時の典型的な手法である、木材を一部鉄筋の代用としてセメントの骨組みにした部分が確認できるなど貴重な史料という。同所周辺で長年、当時自身が掘った軍用トンネルを捜してきた同市北新の野村晴一さん(90)も調査に参加。ようやく、当時の記憶と現在とを結ぶ懸け橋の発見となった。

幼少のころ同所近くに住み、よく山に入って遊んでいたことからトーチカの存在を知っていた貴志丈一さん(78)が、軍用トンネルを捜している野村さんのことを報じた新聞記事を見て、連絡を取ったことが今回の発見のきっかけ。

調査には、野村さんと貴志さんの他、戦時中の遺構に詳しい和歌山城郭調査研究会の森﨑順臣さん(72)も加わった。見つかったトーチカについて森﨑さんは
「劣勢にあった旧日本軍が、捨て身の攻撃で米軍との戦いに備えて造ったと読み取れる貴重な遺構」と評価している。

発見された場所は高さ40㍍ほどの位置で、当時は人が行き来する道があったとみられるが、現在は存在しない。トーチカの開口部は、横2㍍、高さ60㌢、奥行き1㍍50㌢。開口部付近は、土砂で埋もれているが、貴志さんが子どものころの記憶によると、トンネルのように通り抜けられたという。

悲願の戦争遺構の発見に、野村さんは「周辺には製材所があり、資材を女学生が運んでいた当時を思い出した」と感慨深げに話していた。

トーチカにたどり着いた(左から)貴志さん、森﨑さん、野村さん

トーチカにたどり着いた(左から)貴志さん、森﨑さん、野村さん