紀伊半島大水害から5年 照井さんが写真展
かつて泥で埋まった田んぼで黄金色に光る稲、緑を取り戻しつつある那智の滝――。紀伊半島大水害から5年。復興への足取りを伝える有田市の写真家・照井四郎さん(68)の写真展「あの日を忘れない~照井四郎が見た紀伊半島豪雨からの5年」が9日まで、和歌山市吹上のNHK和歌山放送局内で開かれている。
被害の大きかった那智勝浦町を中心に、新宮市や御坊市で撮影した大小約40枚を紹介。照井さんは「人は時間がたつと忘れてしまうもの。記憶を呼び覚まし、後世に伝えていくのがカメラマンの使命。写真を通して5年前の出来事を思い起こし、自然災害への備えを新たにしてもらえれば」と願っている。
照井さんが初めて被災地に入ったのは水害発生から1カ月後、10月初旬だった。県内で起きた災害に「カメラを向けるのがつらく、気持ちをしっかり持たないとと思った」と振り返る。
今展では5カ所で定点撮影した写真を、5年前と現在とを見比べられるように展示。下段に並ぶ写真は、約2週間前に撮影したもの。
海岸にたくさんのがれきが打ち上げられた御坊市の煙樹ケ浜は、今は穏やかな浜に。泥が流れ、ひび割れた田んぼも稲がたわわに実る。熊野速玉大社の例大祭が行われる「御船島」は、熊野川の増水で木々がさらわれたが、現在では緑が目立つようになった。
「同じ場に立つと5年前の光景が浮かびましたが、人の手や自然の力によって少しずつよみがえっていく姿は、すごいなぁと思わされます」
そして「また『宿題』をもらった」とも話す。今も継続して撮影を続ける照井さんは「恐らくこの宿題が完結することはないでしょうね。生涯を通じて、このまちの姿を記録していきたい」と話している。
午前9時半から午後7時まで。問い合わせは同所(℡073・424・8111)。