アクロナイネンの創業物語  髙田さんがつづる

遠心クラッチなどを製造する和歌山市西浜のアクロナイネン㈱の、勝本僖一会長(78)の創業からの軌跡を記した『慶運の星の下に生まれし者』が11月1日に出版される。内容の一部は本紙毎週水曜、同タイトルで連載中。元県職員で、著作家の髙田朋男さん(61)が取材し、執筆した。髙田さんは「勝本会長の不屈のストーリーは経営者だけでなく、多くの人を魅了する。県の経済界においても、企業経営史の貴重な資料になるはず」と話している。

勝本会長は車の部品販売会社を経て、エンジン修理会社を創業。昭和43年に㈱和歌山内燃機(現アクロナイネン)を設立し、製造業へと転換。世界トップクラスの技術力を誇る同社を一代で築き上げた。

同書には創業のきっかけから、摩擦材の総合ノウハウの獲得、不可能とされてきたダイカスト鋳造法による製造技術の確立、中国やタイへの海外進出など、50年間の歩みがつづられている。

製品のリコールで倒産の危機に見舞われながらも、全社を挙げて対応。窮地を回避したことなど、多くの苦難に直面しながらも、乗り越えてきた道のりを紹介している。

タイトルになっている「慶運の星」は、髙田さんの造語。苦境をもチャンスに変え、事業に結び付けて成功に導いてきた勝本会長に「喜び事の多い星がある」と、幸運を呼び込むイメージを重ねた。

また、同社のグループ会社である勝僖梅の創業秘話、重度障害者を多数雇用する企業の創設についても語られている。

「何事も創意工夫をする」「人のためになることは喜んでする」「世の中の流れを読む」――など、勝本会長の経営哲学も随所に垣間見え、髙田さんは「慶運の星の陰には、並々ならぬ努力の積み重ねがあり、それが一番の読みどころ」と話す。

勝本会長は「いつか会社の歩みをまとめたいと思っていたが、自身では語り切れない部分もあった。自分がやってきたことを知ってもらうのはおこがましい気持ちもありますが、こんな時代もあったことを若い方にも分かってもらえたら」と話している。

非売品だが、希望する人には先着約100部を無料配布する。受け付けは11月1日~15日。問い合わせは同社総務課(℡073・424・8101)。

完成した書籍を手に勝本会長㊧と髙田さん

完成した書籍を手に勝本会長㊧と髙田さん