虐待防止に法医学活用を  医大の近藤教授が訴え

児童虐待が大きな社会問題となる中、県内でことし4月から法医学の知識を活用した虐待防止の取り組みが始まっている。28日には和歌山市紀三井寺の県立医科大学で、報道関係者を対象に取り組みが紹介され、同大法医学講座の近藤稔和教授が児童虐待の現状や県内における取り組みについて解説した。

児童虐待は身体や性、心理への虐待に加え、養育の怠慢、拒否も含まれる。件数は増加の一途をたどっており、平成24年度に国内の児童相談所が対応した相談件数は、平成11年度の5・7倍にのぼる。

近藤教授は児童虐待の深刻さについて、虐待を受けた子どもの写真を示しながら解説。虐待の結果として、身体の損傷だけでなく、発育の遅れや感染症罹患などの症状が見られると指摘した。

近藤教授によると、数年前から虐待防止において、法医学の重要性が各分野から指摘されるようになったという。近藤教授は虐待の有無に関する判断や被虐待児の保護において、傷の状態診断を専門とする法医学の役割は大きいと話した。

県内における児童虐待の件数は、400台だった平成20年ごろに比べると大幅に増加しており、平成26年度には932件にのぼった。被害児童の約3割が小学生で、加害者の約半数が実母となっている。

近藤教授は昨秋、児童相談所から相談を受けて試験的に取り組みを開始。ことし4月から相談所と連携して虐待が疑われる児童の診断を行うなど、本格的な活動に乗り出した。これまでに5件の相談を受けたという。

近藤教授は「虐待死は救える命。行政・教育・医療が連携して取り組み、子どもたちが安全で楽しく暮らせる社会をつくっていきたい」と意気込んでいる。

取り組みを紹介する近藤教授

取り組みを紹介する近藤教授