家康紀行④「滝山東照宮」の歴史と文化
前号では岡崎城下町の街歩きコースに建つ味噌蔵と、そこで製造される市の特産品「八丁味噌(はっちょうみそ)」の歴史について取り上げた。
今週は舞台を郊外へ移し、家康公を祭る三大東照宮の一つとされる「滝山(たきさん)東照宮」を紹介したい。
滝山東照宮は岡崎城から北東へ約6㌔に位置する。3代将軍徳川家光の「三河の国は徳川家の本国で岡崎城は家康生誕の地であり在世の本城であったことから岡崎に権現様を新たに迎えたい」との命により、正保3年(1646)に創建された。滝山東照宮に隣接する「滝山寺」が、家康の信仰があつかったことからこの地が選ばれたという。以後、日光東照宮(栃木県)、久能山東照宮(静岡県)と共に三大東照宮の一つとして人々に崇敬されてきた。
社殿には東照宮の特徴といえる華麗な漆塗りと鮮やかな色を用いた彫刻が施され、所々に葵の御紋が配置されている。社殿の上部を支える蟇股(かえるまた)と呼ばれる建築部材や、彫刻が行われる手挟み(たばさみ)と呼ばれる装飾用の板など、江戸初期の建築技法が用いられている。創建から現代まで修復が度々行われ、昭和28年に本殿、拝殿、幣殿、中門、鳥居、水屋などが国の重要文化財に指定されている。
家康の信仰があつかった「滝山寺」の本堂と三門も、室町時代前期に建立された貴重な建造物として国の重要文化財に指定。年に1度行われる「滝山寺鬼まつり」は本堂に大きなたいまつを持ち込む火祭りで愛知県の無形民俗文化財に指定。筆者が取材に訪れた際は準備の真っ最中。地域の方々が大勢集まり、その勇壮さや伝統のある祭りを世襲で受け継いでいることを熱心に教えてくれた。
東岡崎駅から名鉄バスで約25分。滝山寺下で下車し徒歩約3分。
(次田尚弘/岡崎市)