短編映画『替わり目』 映画祭でグランプリ

和歌山大学観光学部の木川剛志准教授が監督を務め、笑いの文化研究、発表を行うボランティア団体「わかやま楽落会」メンバーが出演した短編映画『替わり目』が、1月に長野県で行われた「第9回商店街映画祭」でグランプリと串田和美監督賞をダブル受賞した。和歌山市のぶらくり丁を舞台に温かい人間ドラマが描かれ、木川准教授は「受賞は運が良かったという部分もある。受賞を機に和歌山でも映画熱が高まれば」と話している。

同作品は同会の社会人落語家が、会長の娘に恋をしてしまったことから始まる友情を描いた物語。ほとんどの役柄を同会のメンバーが演じた。
木川准教授は前任の福井工業大学でも福井の町を舞台にした映画を撮影。また、アマチュア落語家としても活動しており、同会とは寄席で出会い、大人同士が高座名で呼び合う関係に面白さを感じたという。

昨年5月に同会から木川准教授に講演の依頼があり、その際に映画の撮影を決めた。全員演技は初めてということもあり、配役は台本を基に個人の雰囲気に合わせて決まった。木川准教授も寄席でメンバーを見て配役を考えたという。

8月から9月の2日間で撮影し、ぶらくり丁商店街や京橋などでロケを敢行。主演の楽落亭楠々こと松本正美さんら出演者は、人前で話すことには慣れていても、落語の登場人物を演じるのとはまた違う役者の演技は大変で、着物を着たシーンでは息苦しさとの戦いでもあったという。

同作品は昨年10月に和歌山市内で開かれた同会主催の「地域プロデュース講座」で上映。その後、木川准教授は知人の紹介で商店街が舞台の映画を募集する同映画祭を知り応募。全国20作品の中からグランプリに輝いた。受賞式では串田監督から「レベルの高い作品が多かったが、これらより良い作品は映画館でも見られる。同作品はこの映画祭でしか見られないと思った」と評価された。

グランプリの賞金15万円は、映画の主題歌となっている「紀州人」を作詞した県出身の俳優、小西博之さんの意向で児童養護施設に寄付する予定。

出演した楽落会のメンバーは「機会があればまた撮影したい。普段行っている出張寄席で映画の上映もできたら」と話している。

監督の木川准教授

監督の木川准教授