和大初の観光学博士 景観研究の竹田さん
和歌山大学から初の観光学博士が誕生した。24日に和歌山市民会館で行われた卒業式・修了式で学位を受けたのは、観光学研究科博士後期課程を修了した竹田茉耶さん(28)。平成20年に開設された観光学部の1期生で、紀州漆器の産地として知られる海南市の黒江地区をフィールドに、景観保全やまちづくりについて研究してきた。今後の活躍がますます期待される竹田さんに話を聞いた。
竹田さんは由良町出身で、県立向陽高校を卒業し、同大に進学。入学から1年間は経済学部観光学科に在籍し、観光学部の開設により、2回生からは同学部地域再生学科(当時)で、景観形成や都市・農村政策などを専門とする山田良治教授の指導を受け、学んできた。
学部生時代にゼミの研修旅行でイギリスを訪れ、景観保全に対する住民の意識の高さを目の当たりにし、日本との差を感じたことが、自身の研究の方向性を考えるきっかけの一つとなった。
平成23年に海南市黒江地区の住民らが「黒江の町並みを活かした景観づくり協定」を締結し、地元外の人がまちづくりに参加する「サポーター制度」を設けたことに注目し、大学院では、参加者の年齢、居住地などの属性や参加する理由などを調査。その結果、参加者には歴史ある町並みに高い価値を見いだしている人が多く、他地域でもまちづくり活動に中心的に参加しているケースが多いことなどが見えてきた。
博士前期課程修了後は、和歌山社会経済研究所に研究委員として就職。その1年後に博士後期課程が設置されたことを受けて進学し、同研究所で高野山を訪れる外国人を対象としたアンケート調査などを行いながら、大学で専門分野の研究を続けた。
仕事と研究生活の両立は「すごくしんどかった」と率直な気持ちを漏らす一方で「大学を一度離れて、研究に対する気持ちが強くなった」と話す。同研究所の調査では、まちづくりに関する住民と自治体間の合意形成過程を間近で見ることができ、視野が広がったという。
博士論文の提出を控えていた昨年末は、同研究所の配慮により休職し、論文執筆に集中。「複合型コミュニティーと観光まちづくり」とのタイトルにまとめた研究成果で、第1号の博士号を取得することができた。
後期課程の生活を通して、多くの大学教員が研究に励み、成果を挙げる姿を見て、研究者に対する憧れは増した。
同研究所の仕事の他、景観や環境問題に関する県の審査会委員を務めるなど、竹田さんは活動の幅を広げており、「これからは黒江以外の地域も見て回り、さらに研究を進め、まちづくり活動に関わっていきたい」と意欲を話している。