村人が伝える戦争の記録 ラジオ番組「鎮魂」
和歌山市のフリーラジオディレクター・岩田隆清さんが企画・構成を担当し、非戦と平和をテーマにしたラジオ番組「鎮魂」を制作した。田辺市の山あいの秋津川地区で、無人となった旧家の土蔵から31年ぶりに見つかった一冊の住民手作りの戦没者慰霊記録集を軸に、物語が展開。26日午前7時からFM TANABEで放送される(インターネットで視聴可能)。
岩田さんはかつて和歌山放送で記者やディレクターを経験。現在はフリーディレクターとして、全国各地のラジオ局で番組制作に携わっている。
「鎮魂」は54分番組で、和歌山市の学習塾代表中谷哲久さん、劇団員としても活躍する同市の城向博子さんが進行役として出演している。
今回取り上げた記録集は戦後40年の年に地域の村人26人が、戦争で亡くなった若者103人の面影を郷土の歴史に刻もうと4年がかりでまとめ上げたもの。住民手作りの慰霊記録集としては全国で唯一とされ、家族や村人に聞き取りし、人柄に重点を置いて記録しているのが特徴。ただ、遺族会の会長も「初めて見た」と言うほどで、長らく存在が忘れられていたという。
同地区主催の慰霊祭にも参加した中谷さんは「戦争がなければこの若者たちはどんな人生を歩んだのだろうと、記録集を手にした時には涙が出ました」、岩田さんは「『自分たちの目線でこの戦争を書き残そう』と、行間から伝わるものがあった」と振り返る。
番組では記された内容を紹介。理不尽な戦争による若者の死を悼み、記録集に込められた戦争への強い怒りや無念さを伝えている。また、書き込まれていた「謎の数字」に着目。歴史的事実から考察し、その真相が明かされていく。癒やしやよみがえり思想から命を尊ぶ熊野の地域性にもふれ、熊野で造られた第五福竜丸の建設中の音や、川のせせらぎなども盛り込んだ。
岩田さんは「村にとっても有能な若者の命を奪った、それが戦争。残された住民手作りの記録は、ストレートな非戦の訴えよりも強烈に心に残るものがある。日本では過去の反省が薄れつつある中、一つの警鐘になれば」と話している。