日だまりのような店 女性起業の喫茶1年
女性の起業による地域経済の活性化が期待される中、和歌山市口須佐の青木律子さん(56)は、自宅を活用して喫茶店「グミの樹」を開店し、今月5日に1周年を迎えた。約40年かけて夢を実現した青木さんの温かい笑顔を求める客で店内はいつもにぎわっている。
店名の由来は、現在は使われなくなった同所の古い地名「グミノ木」。13年前に家を建築した際、必要とされた書類を作成する際に知った。
喫茶店の開業は「簡単なことではないので、実現は難しいかなと思いながらもずっと夢見て、周囲にも話していました」という青木さん。施工業者には、店に改築しやすいような間取りを依頼した。
自分の店を持ちたいと思うようになったきっかけは、12歳の頃、父に連れられて行った喫茶店で、店主の温かい人柄にふれたこと。約40年前に同市吉田で西本賀陽子さん(69)が営業していた約7坪、カウンター席のみのシンプルな調度の店だった。
神戸のコーヒー店で学んだ西本さんが「日だまりのようにお客さんにホッとしてもらえる店」を目指して営業しており、西本さんは少女の頃の青木さんを「家庭的で器用な子だった」と記憶しているという。
「勉強よりも料理などが好きで家の手伝いもよくしていた」という青木さんは、高校3年時に料理学校にも通い、短大で服飾デザインを学びながら和服の着付けを学んだ。洋菓子の製法を学ぶため神戸まで足を運んだ時期もある。
20歳で結婚後、婚礼の貸衣装の会社に約30年勤務し、婚礼衣装に携わる中、短大で学んだ洋服の製法の知識や和服の着付けの技術を生かすことで「ご縁のあったお客さまが大変喜んでくださり、接客の大切さと楽しさを学びました」とほほ笑む。
喫茶店の開業にはその豊かな接客経験が役に立っており「人生の流れの中で経験したことは何一つ無駄にならないと思います」と話している。
今後については「幼い頃に憧れた、何よりもお客さまを大切にするお店づくりをしていきたいです」と実現させた夢への思いを新たにしている。