「監視社会」の批判当たらず 組織犯罪処罰法改正案で質疑

「テロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案」は目下、国会における最大のテーマです。一部のマスコミや野党はこの法律を「共謀罪」と称しとりわけ民進党と共産党は強硬に廃案に追い込むと意気込んで厳しい論戦と国会運営が続いています。私も法務委員としてこの審議に加わっていますが委員室が一時、騒然となるような異常な状況が何度も繰り返されています。この法律が成立すれば通常の日常生活や言論活動が一般の市民レベルにおいても制限されるという観点で野党は反対をしております。しかしそのような疑念は全く当たりません。この法律で新設される「テロ等準備罪」は成立要件を極めて慎重にかつ厳格に定義しています。「謙抑的」「抑制的」という言葉で説明されますが対象を「組織的犯罪集団」に限定しております。その上で計画、実行準備行為という成立要件が付加され一般の市民生活との違いを極めて明確に定義しています。またこの法律がなぜ今、必要とされているのかという点では犯罪やテロなどが極めて国際化している現在、国際的な捜査情報などを世界レベルで入手できなければ未然の策を講ずることはできません。そのために世界187の国や地域が「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」を締結しています。この条約に加盟することによって締結国間で円滑に捜査情報などがやり取りされています。しかしわが国は未だにこの条約に加盟できておりません。このままでは2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて充分な治安上の対策ができません。この条約に加盟するには国内法を整備することが求められていますので今、審議されている法律を一日も早く成立させなければ締結には至りません。加盟国が187にのぼるということは世界のほとんどの国や地域が加盟しているということです。例えば今、緊張感が高まっている朝鮮民主主義人民共和国でさえ加盟しています。先進国で加盟していないのは残念ながらわが国のみという状況です。
これらを踏まえて私は去る4月25日に法務委員会で質問をさせていただきました。その議事の一部を掲載させていただいてご報告とさせていただきます。一般市民の目線で質問させていただきましたが特に「監視社会」についての部分を抜粋いたします。
【門】今回、この法律の改正によって(中略)捜査機関が一般市民を常に監視していくであろうというようないわゆる「監視社会」に日本がなっていくんじゃないかというようなご懸念や疑問そしてまた心配の声が上がっておりますがいかがですか。
【井田参考人】私自身、事情を若干知っている点となりますとドイツなんですけれども(中略)、そういうドイツの結社罪を見ますと、これは大変要件が広く、広範です。簡単に言いますと何らかの犯罪おおよそ何らかの犯罪を実行することを主目的として組織、団体をつくりますと、それだけで犯罪になります。それから、その構成員となることも犯罪ですし、構成員を募ることも犯罪になるという非常に広範な構成要件といいますか処罰規定になっています。先ほど私、法案は三つの限定、三重の限定がかかっているというお話をしましたけれども、ドイツの結社罪というのは一個の絞りだけ、しかもその一個の絞りも、日本の法案と比べるとはるかに広いものになっているということです。同時に、刑事訴訟法にはそれに対する通信傍受の規定もありますので、そういう意味でいうとかなり、ドイツは日本よりははるかに広い法制を持っているわけです。にもかかわらず、「監視社会」であるというような言葉はドイツで私は聞いたことはございません。それと比べると、日本の場合はそういう意味でいうとものすごく限定したものでありますけれども、また、通信傍受の規定も入れないということですので、そういう意味では非常に謙抑的なといいますか、非常に控え目な組織犯罪対処規定であるというふうに感じて、ますます、そういう意味で、「監視社会」の批判は当たらないのではないかと思っております。