触って学べる仏像教材 和工が盲学校に贈呈

県立和歌山工業高校(和歌山市西浜、田村光穂校長)産業デザイン科の生徒らが作製した、触って学べる文化財のレプリカが5月30日、和歌山盲学校(同市府中、坂口勝弘校長)に贈呈された。目が不自由な生徒が文化財の細部まで確認できる貴重な教材となり、学習効果とともに両校生徒の交流の推進も期待される。

盲学校は県立博物館と協力して、触って読む図録「さわって学ぶ」シリーズを平成23年から制作。今回は『さわって学ぶ 仏像の基礎知識』に掲載されている薬師如来坐像(紀の川市、薬師寺蔵)や愛染明王立像(同、円福寺蔵)など県内にある平安時代から江戸時代にかけての仏像7体のレプリカが贈られた。

仏像は同博物館が和歌山工高に作製を依頼。仏像をスキャンした3Dデータを組み合わせ、ペンを通して3Dデータの感触が伝わる機器「触感CAD」を使ってデータを削ったり塗ったりして作り込んでいく。データは3Dプリンターに送られ、数十時間で完成する。今回は触りやすいように、実物の約半分の大きさで作製した。

贈呈式は和歌山工高で行われ、産業デザイン科3年生と盲学校の生徒4人が出席。同科の原那響さんが盲学校3年の榎本由夏さんにレプリカを手渡した。また、岡本邦彰副館長から和歌山工高に感謝状が贈られた。

盲学校の生徒は贈られた仏像を触り、仏像の細部の様子まで確認できることに驚いていた。原さんは「先輩が作ってきたものが役立ち、この場にいられることがうれしい」、榎本さんは「仏像を見るのは難しいので、触って学べるのはうれしい。大切に使いたい」と笑顔であいさつした。

その後、触感CADを盲学校の生徒も体験。和歌山工高の生徒に使い方を教わりながら、仏像の表面を削る作業に取り組んだ。

盲学校1年の伊藤智之さんは「3Dプリンターでできた仏像は、指先まで細かくできていてびっくりした」、和歌山工高3年の谷口莉緒さんは「目の不自由な人と話すのは初めてでした。盲学校のみんながうれしそうで良かった」と話していた。

盲学校は、レプリカを郷土学習や美術の授業などで活用するとしている。

レプリカを手渡す原さん㊨と榎本さん

レプリカを手渡す原さん㊨と榎本さん