イノベーション継承 島精機の三博次期社長

コンピューター横編機で世界トップシェアを誇る㈱島精機製作所(和歌山市坂田)は5月30日、創業者の島正博社長(80)の後任として次期社長に就任予定の長男・島三博副社長(55)が同社で記者会見し、事業のさらなる発展に意欲を示した。

新社長人事は5月1日の取締役会で決議。正博氏は代表権のある会長となる予定で、6月28日開催の定時株主総会での承認を経て、正式に就任する。

県内を代表するイノベーション企業のトップ交代の会見には、報道各社や繊維業界紙の記者ら約30人が詰め掛けた。

三博氏は、同社の強みを「技術開発で業界に起こすイノベーション力があること」と語り、創業者の正博氏はカリスマ性があり、天才的ともいえる頭脳で技術開発を進めてきたとし、「これからは『天才』に頼るのではなく、社員が一丸となって考える集団になることが必要だ」と強調した。

社長交代の理由の一つについては、正博氏が平成15年に開発した、無縫製ニットの技術「ホールガーメント」の出荷台数が順調に伸びていることを挙げ、「創業55周年を迎えることと合わせ、父もふんぎりがついたようだ」と明かした。

ホールガーメントについては、当初は「安価な製品作りを推進するもの」という捉え方をされたことにふれ、「縫い代がないからこそ、しなやかなシルエットやデザインを実現できる」という、同社が主張する製品の付加価値への理解を、顧客一件一件に求めた経験を紹介した。

アパレルファッション業界の現状については、自社商品やサービスを独自運営のウェブサイトで販売する「ECサイト」が台頭する転換期にあると分析し、「ホールガーメントの機械にECサイトをリンクさせながら、エコ、クイックレスポンスのサービスを消費者に提供していきたい」と述べた上で、人材の強化や未参入の国への販売に力を入れる考えを示した。

新社長就任への決意を語る三博氏

新社長就任への決意を語る三博氏