脳動脈瘤の最新治療 医大で9月から導入
くも膜下出血の原因となる「脳動脈瘤(りゅう)」の最新治療法「フローダイバーター留置術」が9月から、和歌山市紀三井寺の県立医科大学付属病院で受けられるようになる。これまでの治療法に比べて手術にかかる時間が短く、治療の確実性も高いことから、くも膜下出血の予防につながることが期待される。
脳動脈瘤は、脳の動脈に発生するコブのような膨らみ。大きくなると破裂する危険性が高まり、破裂するとくも膜下出血が起きる。脳ドックで見つかることが多く、同大脳神経外科講師の増尾修医師によると、脳動脈瘤の大きさが7㍉を超えた場合、約60人に1人の割合で破裂するという。
脳動脈瘤の治療はこれまで、頭蓋骨を開け脳動脈瘤の根元をクリップで挟み血液の流入を止める「クリッピング術」か、カテーテルを脳の血管に到達させ金属製の細いコイルを脳動脈瘤に入れる「コイル塞栓術」で行われてきたが、クリッピング術は患者の体に重い負担がかかり、コイル塞栓術は大きな脳動脈瘤を確実に治療するのが難しいなどの欠点があった。
新しい治療法「フローダイバーター留置術」は欧米でいち早く導入され、国内では平成27年10月から保険の適用対象に。血管にフローダイバーターと呼ばれる金属製の網でできた細い筒を入れ、脳動脈瘤の中に血液を入りにくくする。手術時間は、現在多く行われている「コイル塞栓術」が約4時間なのに対し、約2時間に短縮されるという。大きな脳動脈瘤の確実な治療が期待される。脳動脈瘤自体の大きさが直径10㍉以上、根元が4㍉以上の場合が保険適用対象となる。
政府は「フローダイバーター留置術」が受けられる医療機関を少しずつ増やしており、現在は全国で23にとどまっている認定施設を9月には35まで増やす予定。県立医大は5月に認定を受けており、すでに5件の手術予約が入っているという。
増尾医師は「これまで脳動脈瘤は大きいと放置されるなど、十分な治療を受けることができなかった。早期治療ができ、手術時間も短縮されるので、患者さんの負担も減ると思います」と話し、新しい方法での治療に意欲を示している。