家康紀行(32)有田川鉄道公園「D51827」

前号では浜松が誇るB級グルメ「浜松餃子」の背景とその魅力を取り上げた。今週は時を同じくして浜松で生まれ、この春、和歌山へやって来た蒸気機関車を紹介したい。
「D51827」。デゴイチの愛称で親しまれる蒸気機関車が、和歌山県有田川町の有田川鉄道公園に搬入されたことを本紙でご存じの方も多いと思う。夏休みに合わせ、運転体験や乗車体験などさまざまな試みが行われ地域を大いに盛り上げたこの車両は、1943年、浜松市の国鉄浜松工機部で製造された。
米原機関区の所属となり、終戦後の1946年から1973年まで岐阜県の中津川機関区で活躍。中央西線(名古屋-塩尻)の電化に伴い、1973年7月9日の電化記念お別れ列車として運行された後、同年11月22日をもって引退。「SLの雄姿を後世に残したい」との思いから愛知県あま市の男性が購入し、私有地に保管庫を建て40年余り大切に保管してきた。
ことしになり鉄道車両などの重量物を輸送するアチハ株式会社(大阪市住之江区)が譲り受け、4月18日に同公園へ搬入。石炭や火を使わず圧縮空気方式で動くよう整備された車両は、ボイラー技士の資格がなくても運転ができ安全。
先月27日、夏休み最後の乗車体験では幼児を連れたファミリーでにぎわい、一日の乗車人数は600人を超えた。同社によると9月以降のイベント開催は未定。デゴイチを全国にリースし地方創生に役立てると同時に、蒸気機関車の文化や技術の伝承を図りたいという。
浜松に生まれ、和歌山で第二の人生を走り出したデゴイチ。全国の街へ子どもたちの歓声と地域の活力を届けてほしい。(次田尚弘/浜松市)