日本とマレーシアの懸け橋 ハムザさん奮闘

 和歌山県の和歌山大学に留学経験のあるハムザ・ハフィス・イスマエルさん(37)は、現在、母国のマレーシアムラカ洲で会社経営の傍ら、日本とマレーシア間で個人やグループの旅行者を対象に観光ガイドも務めている。マレーシア人には、和歌山市の豊かな自然や海の幸を薦め、日本人には母国の郷土料理を紹介するなど、両国の懸け橋役を務めるハムザさんのガイドは、親切で丁寧と好評だ。

 ハムザさんはことし春、マレーシア人家族5人の、1泊2日の和歌山観光を案内した。午後から和歌山市内に入った一行は、和歌山城で花見をした後、和歌山マリーナシティを楽しみ、同市雑賀崎の旅館、双子島荘に宿泊。翌日は番所庭園でのんびりと過ごして和歌浦周辺を車でドライブした。

 ハムザさんによると、マレーシアには高所から眼下に海を見下ろす場所がほとんどないため、一行は番所庭園から眺める和歌浦湾の景色に大きく感動。さらに花見や和風旅館の佇まい、和食などに日本文化を味わい、「(予定していた)大阪の観光はもういいです」と漏らすほど満足していたという。

 母国で構造物検査を手掛ける会社を経営するハムザさんがガイド業を始めた平成27年の顧客は1組だったが、口コミで翌年に3組、ことしは4月だけで4組の依頼があった。

 ハムザさんは頻繁にマレーシアと和歌山を行き来し、2日には、同市十二番丁のシェアスペース「ルイーダ」が、創業支援を目的に1年契約で曜日オーナー制で開いているカフェを訪問。土曜日のカフェ「ラササヤン」の運営者で、マレーシア人留学生、ハムザさんの後輩にあたるムハマド・ヒルフィ・アリフ(23)さんと親交を温めた。

 ハムザさんは、ムハマドさんが取り組んでいるカフェ事業について、自身が和歌山大の学園祭で、郷土料理の出店を運営した経験を思い起こし「祭りにもビジネスの要素はあるが、楽しみの要素の方が大きい。カフェを継続して運営することは、本格的に経営の勉強ができるので、良い機会だ」と話した。

 同大システム工学部で学んだ、超音波に関する専門技術を生かして母国で創業し、さらにガイド業も営むハムザさん。将来は日本の技術や食品などをマレーシアにさらに紹介したいと夢を語り「大好き」だという和歌山について「都市化しないで、今のままでいいと思う」と笑顔で話していた。

郷土料理のポストカードを手にハムザさん

郷土料理のポストカードを手にハムザさん