ジャズドラマー60年 瀧さん記念コンサート
和歌山県和歌山市のジャズドラマー、瀧益生さん(74)の音楽生活60周年を記念したコンサートが10月21日午後5時から、同市七番丁のモンティグレ(ダイワロイネットホテル和歌山)で開かれる。ジャズドラム一筋に活動してきた瀧さんは「大好きな音楽を続けてこられて幸せ。これからも体力が続く限り、ドラムをたたきたい」と話している。
大阪市出身。バンドマンだった父親の影響で14歳でドラムを始めた。17歳でプロデビューし、大阪を中心に活躍。昭和44年、東芝レコードから、和歌山弁を題材にしたコミカルな「アカナイショ」を発売したのをきっかけに、和歌山へ演奏に来るように。活気あるぶらくり丁や和歌浦、方言に親しみを感じ和歌山へ移り住んだ。いったん音楽活動を休止していたが、世界リゾート博(平成6年)を前に音楽で和歌山を盛り上げようと、「瀧益生&グッドマン」を結成し活動を再開した。
ジャズとの出合いは鮮烈で、ベニー・グッドマンの「SingSingSing」を聴いた時の心躍る気持ちは今も忘れられない。さらに石原裕次郎主演の映画『嵐を呼ぶ男』がドラム熱に拍車をかけ、「正直『女にもてるのはこれや』って。こんなスターになりたいと憧れ、走り続けてきましたね」。
ジャズと共に歩み、音楽のあるシーンには多くの感動があった。印象深いのは和歌浦のジャズマラソンが始まった頃、小学生の男の子が大会を目前にぜんそくで出場できなくなったことがあり、瀧さんが「来年演奏するから、待ってるで」と入院先を訪れ激励。翌年、無事に完走したこと。また、結婚を控えた2人がマラソンを走り切った後、エンドレスラブを演奏してみんなで祝福したことも懐かしい思い出という。
後進の育成にも力を入れる。企画する中高生のジャズフェスティバルは10年以上続く恒例イベントになり、県立粉河高校の粉河KLBラテンバンドの指導は19年目に入った。若い世代がジャズを演奏してくれることが何よりうれしいと言い「音楽は年代を超えたものがある。まるで自分の夢をかなえてくれているよう」と笑顔で話す。
阪神淡路大震災や東日本大震災の被災地へ出向き、和歌山で被災地支援のチャリティーコンサートも継続してきた。
演奏で大切にしているのは、「お客さんがいかに楽しめる空間をつくるか」。その場にいる人のノリの良さや反応を見ながら演奏曲を変える。
「これほど素晴らしい仕事はない。ジャズは肩の凝らない音楽。聴いた瞬間から『楽しい』と思えるような演奏を届けたい」とさらなる情熱を燃やす瀧さん。記念コンサートでは、ペギー葉山さんと62年にわたって音楽人生を共にし「スイングジャズの王様」ともいわれる、88歳の現役ジャズピアニスト・秋満義孝さんと共演する。
「ステージに上がって、自分が夢見たスターになれるか、なれないか。年齢を重ねたいまは『年寄りのスーパースター』になりたいね」――。巧みなスティックさばきは、衰えを知らない。
チケット8000円(軽食、ドリンク付き)。問い合わせは瀧音楽事務所(℡090・8201・8969)。