お城見所ウォーク 語り部クラブの丸毛さん
紀州徳川家の居城、和歌山城に魅了され、訪れる人々にその魅力を伝える「語り部」の活動に情熱を傾けている一人に丸毛光明さん(72)=和歌山県和歌山市木ノ本=がいる。所属する市語り部クラブが11月18日に行う散策イベント「和歌山城とっておきの見どころウォーク」でも語り部を務める。城の歴史だけでなく、強固な防御施設としての城を体感しながら巡る初の試みで、丸毛さんは「普段は案内しないコースで、櫓や石垣の配置の理由などを城の歴史と絡めてご紹介します。いつも見慣れている優美なお城ですが、新たな一面を知ることができるはず」と参加を呼び掛けている。
和歌山市内の製鉄所に長年勤めていたが、9年前、定年の65歳を前に「退職後は何をしようか」と悩んでいた。そんなとき、同クラブの語り部募集を知り「人生が楽しくなるのでは」と応募。運よく採用され、定年を1年早めて語り部の世界に飛び込んだ。
半年間の研修では、紀三井寺や和歌の浦、養翠園など和歌山の観光名所を巡り、行く先で先輩の「語り」を聞き感銘を受けた。「自分の住むまちにこれほど素晴らしい場所があるとは。もっと多くの人に知ってもらいたい」との思いが強くなった。
昔からなじみのあった和歌山城は「いい所だな」と感じていた程度。だが、勉強すればするほど「日本一の城」だと思うようになった。 虎伏山に築かれた城は地上70㍍に天守があり、三方を山に囲まれた城下町が一望できる。眼下には紀の川がゆったりと流れ、西側には太平洋につながる海が広がる。「海と山に囲まれたまさしく『城下町』。こんなところはよそにない。市民はもっとお城を大事にしないと」。
特に興味深いのは石垣。地元産の緑色片岩や友ヶ島の和泉砂岩、熊野の花崗岩が使われており、時代によって石の種類や積み方に違いがある。城内に通じる門やその周囲の石垣の高さ、見通しのきかない構造には防御面での知恵が隠されており、「要塞の城」の顔ものぞかせる。見どころウォーク当日は参加者と石垣からの眺望も楽しむ予定で「上から見下ろせば理由も一目瞭然」と自信を見せる。
「自分がわくわくしないとお客さんも楽しくない」が語り部としてのモットー。城全体が紅葉に彩られる美しい季節が間もなくやってくる。「早くお客さんに話したくてみんなうずうずしている」と笑った。
見どころウォークは定員60人(先着順)。参加費300円。はがきで同会(〒640―8146、和歌山市一番丁3和歌山市観光協会内「和歌山市語り部クラブ」)に郵送するか、ファクス(FAX073・444・3371)、メール(n_k16mfn@yahoo.co.jp)で申し込む。31日必着。問い合わせは草野さん(℡090・8886・8083)。