物語感じる幻想の都市空間 中森さん絵画展
どこかにありそうでなさそうな近代都市と、その間を自由に泳ぐ魚たち――。和歌山県和歌山市の洋画家・中森順一さん(66)の19年ぶりとなる個展が11日まで、同市の県民文化会館大展示室で開かれている。唯一無二の不思議な空間を表現する中森さんは「いろいろなことを想像しながら見てもらえるとうれしいです」と話している。
西和中学校で美術部の顧問だった根来春雄氏に師事。17歳で旺玄会展新人賞受賞以来、県展や和歌山市展をはじめ、数々の公募展で入選、入賞を重ねた。現在は県美術家協会会員で、市展の洋画で審査員を務める。
今展では十代の頃の作品から最新作まで、30号から150号までの油彩画約50点を展示している。
中森さんが本格的に描くようになったのは、50歳で仕事を早期退職してから。キャンバスにはSF映画に登場するような壮大な近未来都市が、天空や水上にあるかのように描かれている。人の気配が感じられるものや、一転誰もいなくなった廃墟を描いた「消えゆく音」、幻想的な「夜の館」などがある。建物を見下ろす視線で、見上げた時の建物も収めた奥行きのある楽しい一枚も並ぶ。
追求するのは、いかに独自の世界を描くか。最近は形ではなく色に重点を置いき、輪郭をとらずに色面で表現するようになり、画面に柔らかさや透明感が出るようになったという。
中森さんは「まだまだ道半ば。自分が描く具象とは何か、もう一度問い直したい。『昨日よりもきょう、きょうよりも明日、いい作品を』という思いで描き続けたいですね」と笑顔で話している。
午前10時から午後5時(最終日は4時)まで。