家康紀行(48)「富士宮やきそば」のブランド戦略
前号では家康紀行の番外編として、富士山本宮浅間大社を取り上げた。昨年末、大社のほど近くに静岡県富士山世界遺産センターがオープン。加えて、昨今は御当地グルメとして「富士宮やきそば」の名が知られるようになり、これを求める観光客も多い。御当地グルメの定着は、市民による地域おこしの活動がきっかけであるという。今週は、富士宮やきそばの発展の経緯から、まちづくりの知恵に迫りたい。
富士宮やきそばの特徴は、固い蒸し麺をベースに、野菜、油かす(肉かす)が混ぜられ、サバやイワシの削り節と青海苔をまぶすというもので、太麺に絡みつく食材とソースの味が絶妙。
約20年前、空洞化が進む中心市街地の活性化を目的とした市民によるワークショップが開催された。富士宮市はやきそばの消費量が日本一。ここに着目し、やきそばを提供する市内の店舗150件余りを十数人のメンバーで訪問しデータベース化。2000年に共通の名称でやきそばをPRするまちおこし団体を立ち上げた。名称を商標化し、販売する店舗にやきそばの作り方や文化・歴史を学ぶ講習会を開催。市内の製麺業者を仕入先とする規定を設け、共通ののぼり旗の使用や商標利用のロイヤリティー契約など、消費者に向けた御当地グルメとしての定義の見える化と活動を継続する仕組みを導入。御当地グルメが集まるB―1グランプリでは第1回と第2回で首位となり、その名が全国に知られるようになった。富士宮市にもたらしたとされる経済効果は500億円ともいわれ、まちおこしの成功事例として名高いものである。
富士山本宮浅間大社や世界遺産センターに近い「お宮横丁」にはアンテナショップも。街を挙げての一体感とそのうまさを味わってみてほしい。 (次田尚弘/富士宮市)