小田井用水路シンポ 世界かんがい遺産記念
岩出、紀の川両市など紀の川沿いを流れる「小田井用水路」が昨年10月に世界かんがい施設遺産に登録されたことを受け、記念シンポジウムが8日、和歌山県紀の川市花野の市民体育館サブアリーナで開かれた。登録実現までの経緯や用水路を維持するための取り組みなどについて講演が行われ、約350人が聴き入った。
小田井用水路は、紀の川の水を右岸の水田に供給しており、橋本、紀の川、岩出各市とかつらぎ町の4市町を流れる。現在のかんがい面積は567㌶で、用水路の延長は32・5㌔。江戸時代中期に紀州藩主だった徳川吉宗が土木技師の大畑才蔵に命じて造らせた。
シンポジウムは、小田井土地改良区と大畑才蔵ネットワーク和歌山が主催。同改良区の林秀行理事長は冒頭のあいさつで、「小田井用水路は今でも広大な農地を潤している。地域の宝を未来につなげていきたい」と意気込みを示した。
世界かんがい施設遺産を決定する国際かんがい排水委員会(ICID)の林田直樹副会長は「ICID世界かんがい施設遺産について」と題して講演。全国各地から立候補があった11施設の中から、小田井用水路を含む4施設が選ばれた経緯を話した。現在登録されている60施設のうち31施設が日本にあり、東アジアから東南アジアにかけて集中する傾向があるという。林田副会長は「アジアモンスーン地帯がいかに水路を大切にしてきたかが分かる」と強調し、同委員会では、登録施設の分散化を促進するため、昨年から1カ国当たりの推薦数を4施設以下に制限する措置が導入されたことを説明した。
小田井土地改良区の米澤一好事務局長は、小田井用水路の構造について解説。上流部は紀の川の河岸段丘の縁を等高線に沿い、下流部は高台の扇状地を流れていることを説明し、「円滑に通水するためには、土地改良施設の改修工事を常に重ね、維持管理していかなければならない」と述べ、また天候に合わせて水位を調整していることも紹介した。
この他、大畑才蔵ネットワーク和歌山の久次米英昭副会長が大畑才蔵の功績を紹介し、2014年に登録された立梅用水路(三重県)について、立梅用水土地改良区の高橋幸照事務局長が解説した。