犯罪被害者支援条例制定を 弁護士会シンポ
和歌山弁護士会主催のシンポジウム「和歌山県における犯罪被害者支援条例~県下全域で犯罪被害者が安心して暮らせるために~」が16日、和歌山市手平の和歌山ビッグ愛で開かれた。県内全市町村の犯罪被害者支援の取り組み状況を調べた弁護士が結果を報告し、犯罪被害者の支援に取り組む自治体職員や弁護士らによるパネルディスカッションが行われ、約70人が聴き入った。
犯罪被害者支援条例は、全国で制定する自治体が増える中、県内で条例があるのは上富田町のみとなっている。
同会の上岡美穂弁護士は、全国の状況を解説した上で、昨年11月に県内全自治体を対象に実施したアンケート調査の結果を報告。回答した29自治体のうち、犯罪被害者への対応窓口があると答えたのは15にとどまり、見舞金の給付や住宅支援などの制度がある自治体は2で、同条例がない自治体の全てが「近々成立する予定はない」と回答した。
上岡弁護士は、頭部を鈍器で殴られ、頭蓋骨陥没骨折の重傷を負った県内在住の女性の事例を紹介。障害者年金の申請について問い合わせるため自治体の窓口を訪れた女性に対し、担当職員は「住民は互いに助け合わなければいけない。あなたのためにいくら医療費がかかると思っているのか」と言い放ったという。上岡弁護士は「誰でも犯罪被害に遭う可能性がある。和歌山は取り組みが遅れている」と指摘した。
「犯罪被害者のために、今何が必要か」と題して行われたパネルディスカッションでは、奈良弁護士会の北條正崇弁護士が、大和郡山市では弁護士会が市長に同条例の制定を要請してから約4カ月で制定が実現したことを報告。犯罪被害者支援団体への自治体の助成については、政策担当者の考え次第で助成金の減額や廃止が生じかねないとし、「条例で財産上の支援を定める必要がある」と話した。犯罪被害者支援に取り組んでいる横浜市職員の木本克巳さんは「被害者の生活上の困り事を自治体が支援するべきだ。自治体の財政は厳しいと思うが、県が非常勤で社会福祉士などの専門家を雇用してはどうか」と提案した。
この他、世界被害者学会理事で常盤大学元学長の諸澤英道さんが講演し、和歌山弁護士会は作成したモデル条例案を参加者に配布した。