英語コンテストで快挙 ダウン症の中西さん
和歌山県和歌山市の中西健志さん(18)は、ダウン症候群がありながら、昨年開かれた「第30回姫路獨協大学高校生英語スピーチコンテスト」で3位、審査員特別賞に輝いた。知的ハンディキャップがある生徒の入賞は初めての快挙。14日に高校を卒業し、大学進学を控えており、将来は得意の英語を生かしてガイドになる夢を描いている。
中西さんは日本航空高校(山梨県)通信制課程で学び、昨年10月に行われた同コンテストに出場。全国から51人の応募があり、予選を勝ち残った16人が本選に進み、練習の成果を出し合い競った。
中西さんのスピーチのタイトルは「Precious Words(大切な言葉)」。自分を励まし続けてくれる、祖父からもらった言葉「自分を信じる」について語った。シャイで人前で話すのは苦手な性格だったが、祖父の言葉が心の支えとなって練習を重ね、乗り越えてきたことを紹介。「どんな困難に直面しても『自分を信じる』という言葉を強く持って夢をかなえたい」とスピーチした。祖父のこの言葉は、今も座右の銘となっている。
英語との出合いは3歳のころ、市販の英語の音声テープを両親と聞いたことがきっかけだった。その後、姉と一緒に歌やダンスを通して英語と自分との距離を縮めてきた。だが、中西さんにとって英語でのコミュニケーションや英文の和訳は難しく、家族や英語の先生に手助けしてもらいながら、単語を一つ一つ何度も耳から覚えるようにし、英語を英語のまま理解するように努力してきた。
中学3年生の時、学校で英語コンテストの募集を知り「こんなの(英語で)言えたらいいな。やってみたい」と母に話したことがきっかけで初めて参加。勉強を重ねて他のコンテストにも出場するようになり、特別賞を受賞するなど、自分の英語に自信を深めていった。
中西さんは「英語を勉強している時が一番楽しくて幸せ」と笑顔で話す。わが子を支え続けてきた母のけいこさんは「普通の子育てと同じ。特別じゃないという理解を得ることが一番大変です」と言う。中西さんの英語学習についても「できないだろうと思わないで、本人がやりたいことをやらせるようにしたことが良かったですね」と振り返り、今後の成長への期待に目を細める。
中西さんの将来の夢はボランティアガイドになること。大学に進んだらTOEICに挑戦し、さらに英語力を高めるつもりだ。「東京オリンピックで和歌山にも外国人が来たときには、英語で和歌山城やマリーナシティのマグロの解体ショーを案内したい」。まずは大好きな和歌山の名所を英語で紹介する日を楽しみにしている。