元将校ら平和の祈り 深山陸軍墓地で慰霊祭
和歌山県和歌山市加太の森林公園内にある「深山旧陸軍墓地」の慰霊祭が20日、現地で営まれ、元陸軍将校や元自衛隊員、市議ら約40人が参列し、紀淡海峡防衛の任務を担った兵士たちの冥福を祈った。
同墓地は、日清戦争以降、紀淡海峡を守るために配備された深山重砲兵連隊の兵士たちが眠っているとされる。付近にはかつて連隊と陸軍の病院が設置されており、墓地は兵役中の病死や公傷死者らのために日露戦争後に造営され、約50基の墓が並ぶ。
遺族以外に知る人は少なく、遺族の高齢化に伴い管理する人がなくなり、墓石は倒れ、草木が生い茂る状況だった。昨年からは、元陸軍将校や自衛隊の元幹部らによる和歌山偕行会(久堀和夫会長)に市議らが加わったメンバーが遺族会の名称を引き継ぎ、深山会(旧陸軍墓地を守る会)として墓地の整備、管理に取り組んでいる。
慰霊祭で深山会会長の吉本昌純市議(61)は、参列者らの協力により墓地周辺の草刈りなどが行われ、美しく整備することができたことに感謝。「この地で恒久平和を祈り、御霊を慰霊させていただくことができて感無量」と話した。
僧侶による読経の中、代表して陸軍大尉だった久堀会長(95)が焼香し、参列者は慰霊と平和の祈りをささげた。陸上自衛隊信太山駐屯地の第37普通科連隊の隊員はラッパで「国の鎮め」「君が代」を演奏した。
慰霊祭を終え、久堀会長は「3年前には私1人で墓に手を合わせた。皆さんが広く声を掛けていただき、たくさんの人が集まり本当にありがたい。この場所を若い人にも伝え、守っていきたい」と話していた。