世界に一つを作る 水着専門店営む井本さん
和歌山県海南市船尾で水着専門店「ひかる」を営む井本ひかるさん(50)は、顧客の要望に応じてさまざまなデザインの水着やフィットネスウエア、小物などを製造販売している。リピート客も多く好評で、卓越した縫製技術を駆使した一点ものの作品を生み出す井本さんに、その創作の舞台裏や作品への思いを聞いた。
井本さんが手掛けているのは、伸縮性のある生地を使ったさまざまなウエア。自宅の工房には多種類の色柄の生地がそろっており、顧客の希望するデザインに応じて、数種の生地を組み合わせる。
長年の経験から生み出されるセンスの良い仕上がりに「こんな作品ができるなんて、あなたに任せて良かったわ」との顧客の感想がうれしいとにっこり。特に好評なのは、水着とそろいの生地で作る無料サービスの帽子で、「かわいいでしょう?」。
大手のスポーツウェアや水着の縫製を請け負う㈱イモトで、結婚を機に縫製を担当し、これまで約30年にわたり懸命に技術を磨いてきた。井本さんによると、大手ブランドから依頼される複雑なデザインの水着は、曲線縫いやワイヤーを胸のカップに縫い込んだりする部分などに高い技術が必要で、それを持つのは全国で約10社、県内では同社のみという。
子育てや介護に追われた期間を経て、先代が亡くなった際には「しっかりとやっていかなくては」と覚悟を決め、益々縫製に没頭した井本さん。「難しい縫いもできるようになった!」と技術力が上がったことを確信した約7年前から、同社の仕事と並行して、本格的にオリジナル水着の製造を始めた。製品の完成度に厳しかった夫・好紀さん(59)も現在は「うちの大きな力になっているよ」と妻の技術力に信頼を置く。
井本さんはというと「夫のセンスをごひいきにされるお客さんもおられます」と、世界に一つしかないウエアや小物を求める顧客が増えていることに手応えを感じている。
元々おしゃべりの好きな井本さんは、作品作りを通して客との対話も楽しめ、喜ぶ顔も見ることができる同店の事業に、ミシンの前に座りっぱなしのハードな毎日を過ごしながらも「満足しています」と優しくほほ笑んでいる。
セミオーダーのオリジナル水着は市価のおよそ三分の一で購入できる。
問い合わせは同店(℡073・482・2278)。