和大院生の前芝さん 無農薬レストラン開業へ

 和歌山県串本町須江(紀伊大島)で無農薬野菜を栽培している和歌山大学経済学研究科経済学専攻修士課程2年の前芝一輝さん(24)は9月に「無農薬野菜レストランNORM(ノーム)」を開業する。串本町に生まれ、和歌山市で育った前芝さんは地域の活性化に意欲を燃やしている。

 前芝さんは、祖父母が須江で農業を営んでいたことから、野菜は身近な存在だった。県立和歌山高校に在学中、「社長になって何か大きなことをしたい」と起業に関心を抱いた。

 大学、大学院で学ぶ中で、高齢化や過疎化、農業の後継者不足など地方の課題を痛感。「何か自分にできることはないか」。昨年4月から1年間休学し、祖父母の家に住み込んで農業修業に励んだ。農地は10㌃でトマトやタマネギ、ジャガイモなど多品種少量生産で30種類を栽培する。

 前芝さんが学んだのは無農薬野菜の栽培方法。自然の味を生かすことができ、体にも優しいのが特長。農業経験はほとんどないが、50年以上のキャリアがある祖父母を師匠に栽培のイロハを学んだ。「農作業は大変なことも多いが、収穫する時間が楽しい。これは良い商品、良い味になると思う瞬間が最高」と笑顔で話す。

 若い前芝さんが須江に来たことで地元の人は興味津々。前芝さんの農業への情熱に畑を譲る人も現れた。「須江はきれいな海や山が魅力。静かで暮らしやすく人も優しい。こんな素晴らしい場所にもっと人が来てほしい」と、自らの夢である起業と野菜作りを融合させた無農薬レストランで町を活性化させたいと強く思った。

 レストランは畑から徒歩10分の曾祖母の家を改良。野菜に合わせたメニューで土日祝日限定で営業する。値段設定は1500円から2000円。野菜のデザートやドリンクなどを提供し新鮮な野菜の味を堪能してもらう。「自然や体に良いものにこだわっている。素材を生かした料理で、野菜や果物が持つ自然の味を楽しんでほしい」。

 現在月・火曜は大学に通い論文作業に励んでいる。水曜から日曜までは須江に戻り、農作業をする毎日。当初1人だった活動もSNSで参加者を募り現在は20人になった。「無農薬レストランが軌道に乗ってくれば、農業体験や民泊など島をひっくるめたビジネスをしていきたい」と意欲的に話している。

地域の活性化へ意気込む前芝さん

地域の活性化へ意気込む前芝さん