家康紀行(74)名古屋城天守閣の木造復元
前号では、数々の個性的な名古屋めしの味の決め手となっている岡崎市名産・八丁味噌の歴史と特徴を取り上げた。今週は、5月から入場が禁止された名古屋城天守閣の木造復元を支援する市民の動きを紹介したい。
名古屋城天守閣は家康の命により1612年に完成。1930年、名古屋市に下賜され城郭としては初めての国宝に指定されたが、1945年の空襲により天守や本丸御殿などの主要部を焼失。終戦後、市民による寄付で鉄筋コンクリート造の天守閣が再建された。
再建から50年がたち、老朽化や耐震強度の問題が顕著になり、その課題の克服と本質的な価値を理解しようと、創建時の姿をできる限り忠実に再現した木造天守への建て替えが決定。2022年の竣工を予定している。
昨年7月から始まった「金シャチ募金」は名古屋市が主導。すでに2億円を超える寄付が集まっているという。
寄付の方法は複数ある。「10縁募金芳名札」に募金者の氏名と共に、未来の子どもたちへのメッセージや名古屋城への思いを記載し募金。天守閣と共に次世代へ受け継ごうと企画されたという。名古屋市の区役所や支所、名古屋城内の募金箱で受け付けている。
他にも、ふるさと寄付金(納税)の対象となる寄付を受け付け、金額に応じて、竣工後の内覧会への案内や、「金シャチ手形」と呼ばれる無料入場券の発行、特別見学ツアーなどの体験型の催しへの案内など、さまざまな特典が用意されている。
木造天守の復元には、空襲による焼失までに名古屋市民が撮影した写真や、国宝指定時の計測図、江戸時代の修理や改築の細かな記録など、他の城と比べ情報量が膨大であったことが鍵であるという。城への市民の愛着が、復元事業を支えている。
(次田尚弘/名古屋市)