白と黒、木版の世界 板画院支部35回記念展

 日本板画(ばんが)院和歌山支部(伊藤正義支部長)の第35回記念展が3日まで、和歌山県和歌山市の県民文化会館中展示室で開かれている。

 日本板画院は、世界的な木版画家・棟方志功によって1941年(昭和16年)に創設。全国に16の支部が発足し、木版画の普及に努めている。

 今展では同支部の14人が日本家屋や熊野古道、祭りなどを題材にした木版画42点を出品。

 日本板画院の名誉会員で、同支部の指導に当たる尾﨑斎晃さん(83)は「版画は『捨てて成る絵』。あれもこれもでなく、そぎ落として、いかに自分が言いたいことに正面から取り組むか」と話す。

 会場には迫力ある波しぶき、紀州の民話のワンシーン、まきを背負う女性の後ろ姿など、黒と白のみの静かなたたずまいの作品が並び、訪れた男性は「伝統的なモチーフもいいですが、山の上に整然と並んだ集落の作品に新鮮さを感じます」と見入っていた。

 尾﨑さんは「使う木も彫刻刀も墨も、和紙も日本のもので、オールジャパン。最近は多色刷りも増えていますが、白と黒の表現、志功が掲げた世界に冠たる日本の版画の精神を大切に、それぞれが取り組んだ作品をご覧いただきたい」と話している。

 第35回を記念し、来場者にはもれなく同支部会員の小品を謹呈。午前10時から午後5時(最終日は4時)まで。

緻密で力強い作品が並ぶ会場

緻密で力強い作品が並ぶ会場