地域再生の代名詞「今治タオル」
前号では、サイクリングを中心とした体験型観光で注目されている「しまなみ海道」について取り上げた。
四国側の起点となる今治市は、大阪の泉州と並ぶタオルの生産地。昨今、形や色がおしゃれで、ブランドのある特産品として名高い「今治タオル」を紹介したい。
タオルの製造技術はイギリスから伝わったもの。その歴史は意外と浅く、明治5年のこと。もともとはマフラーのように首に巻いて使われる、日用品よりもファッションに近い用途であった。
「今治タオル」の特徴は、タオルを水中に浮かべ沈み始めるまでの時間が5秒以内であるものに対してのみ、名称の使用が認められるという独自の基準があること。この基準には、吸水性の良さを確かめる意味があるという。洗濯を繰り返しても硬くならないよう、よりが柔らかい糸を使うことから、吸水性に優れたタオルに仕上がる。
「先さらし先染め製法」という、糸を先にさらした上で染め・織りを施す。石鎚山系からの豊富な軟水が繊細で柔らかいタオル作りを支えているという。
海外からの輸入品に押され、厳しい市場環境のタオル業界であるが、今治では独自の基準やブランドロゴ、魅力を伝えるソムリエ制度など、熟練の技を伝えその良さを分かりやすく世界に発信する仕組みを、試行錯誤しながら地域ぐるみで打ち出してきた。それがブランド化、地域の産業振興につながり、今や安心・安全・高品質なジャパンクオリティーの代名詞として、世界に名の知れた存在となった。
消費者に素材の良さを伝え、信頼の証が伝わるよう、地場産品の魅力を現代のニーズに合わせデザインする力。タオルに限らず、地域の産業振興に不可欠な発想といえよう。
(次田尚弘/今治市)