和歌山市の文化は尾張から?

2019年の幕開け。皆さまは新年をどのように迎えられましたか。おかげさまをもちまして、本コーナーは9年目を迎えました。ことしもよろしくお願いいたします。

新年初めはお正月にちなんだ話題から。皆さまの食卓に並ぶ「お雑煮」。関西は白みそ、その他の地域はすましが主流であるが、ご家庭により具材はさまざま。広島であればカキ、仙台であれば焼きはぜを入れたもの、山陰であればあずき雑煮など、地域によっても大きな違いがある。
和歌山県の紀北地方、それも和歌山市周辺の狭い地域で江戸時代から続くお雑煮の具材がある。それは野菜の「真菜(まな)」。年末になると八百屋やスーパーの野菜コーナーに並び、当たり前のように購入し調理してきた食材であるが、地域性の強いものであるらしい。
真菜はアブラナ科の一年草。主に奈良県内で栽培される葉物野菜で、奈良県の伝統野菜として認定されている。和歌山の特産品でもない食材がなぜ和歌山市のお正月を彩るのか。答えは和歌山市の歴史に由来するという。
一説には、和歌山城へ徳川家が入城し、紀州徳川家が成立。正月の「験(げん)かつぎ」で、「名(菜)を上げる仕事をしよう」という思いから、真菜が使われるようになったという。
徳川家に縁のある地域を調べると、尾張でも真菜が使わるところがあった。それは、長久手市。小牧・長久手の戦い(1584年)の舞台で、2005年には愛・地球博が開かれた名古屋市の隣町。中部地方では「餅菜」「正月菜(しょうがつな)」と呼ばれるアブラナ科の葉物野菜がお雑煮を彩る。
それが真菜であることを確認できたのは長久手市のみであるが、和歌山市のお雑煮文化は徳川家に由来する尾張の風習である可能性が高いようだ。
(次田尚弘/和歌山市)