東大合格で新たな挑戦 全盲の菅田利佳さん
難病で両目に障害のある和歌山県和歌山市善明寺の菅田利佳さん(18)が、県立星林高校国際交流科を卒業し、4月に東京大学教育学部へ進学する。小中学生時代を県立盲学校で過ごし、高校ではさまざまな挑戦で興味の幅が広がったという菅田さん。推薦入試で合格した最高学府では「やりたいことを思い切りして、研究者として成長したい」と、新たな挑戦を期しており、向上心は尽きない。
菅田さんは小学校入学前に目の難病「網膜色素変性症」と診断され、両目は光の明暗が感じられる程度という。
ピアノが得意な菅田さんは小学6年生の時、障害のある人が書いた詩を曲にのせて歌う「わたぼうし音楽祭」に出場し、自身で作詞作曲した「一歩ずつ」で大賞を受賞。同音楽祭で韓国を訪れた際、現地の人々が日本語でコミュニケーションをとろうとしてくれる姿を目の当たりにし、語学を学ぼうと思った。
高校は英語を専門的に学ぼうと、星林の国際交流科を選んだ。一般校への進学は菅田さんにとって大きな挑戦だったが、ボランティアが参考書を点訳してくれたり、同級生が体育をサポートしてくれたり、周囲のさまざまな人の支えで授業が楽しくなった。
自分の学習環境を考える中で、どうしたら全ての子どもが望む場所で学べるようになるのかとの思いから、教育支援や制度に興味を持つように。2年生の夏には、フランスへの短期音楽留学を経験。音楽とともに他のことも学んでいる先輩の話を聞き、音楽も教育も両方学べる道があると知った。
第37回高校生英語弁論大会では最優秀の外務大臣賞を受賞し、全国高校生未来会議にも参加するなど、さまざまな挑戦を続けた高校生活。フランスの学生や未来会議で活発に議論する高校生をはじめ、チャレンジ精神旺盛な人との出会いがたくさんあった。
宇宙開発の実業家、植松努さんのプレゼンテーションに接した時は、何事も「無理だ」と思いたくないと考えるようになったという。
先生の勧めをきっかけに進学先を考え、自分のこれまでの活動や思いが生かせるならと、東大の推薦入試への挑戦を決めた。塾に通わず自身で猛勉強。教育学部の推薦は5人程度の募集に24人が志願し、菅田さんを含め8人が合格した。
4月からは東京での新生活。「高校生になってから興味や関心の世界が広がったと思う。憧れの大学に行けるのはうれしい。まだこれからがスタートなので、不安より期待の方が大きい」と笑顔で話していた。