徳川頼宣の御膳を再現 海南・海草調理士会

海南・海草調理師会(中岡勲会長)の会員らが進めてきた、初代紀州藩主・徳川頼宣に献上された料理を再現するプロジェクトで、約20種類の献立やレシピが決まり、5日に紀州徳川家の菩提寺・長保寺(和歌山県海南市下津町上、瑞樹正哲住職)に料理が献上された。今後は「徳川御膳」として県内の宿泊施設などで提供してもらうよう働き掛け、観光資源とすることを目指す。

紀州藩の歴史書『南紀徳川史』巻七十九に、頼宣が伊勢(三重県)に鷹狩りに出掛けた際、献上された料理の献立が記されている。徳川御膳は、この記録を基に約1年かけて再現に取り組み、頼宣の和歌山城入城400年の節目に当たることし、完成にこぎ着けた。

同書には「御本膳 一御四半鯛 一御削物」などと、煮物や焼き物、刺し身、なますなどの献立が簡略に記されており、具体的な調理法は書かれておらず、アワビやスズキ、アユ、タコなどの食材の列記から、水や塩で煮たり焼いたりする素朴な料理だったのではないかと推測されている。

同会やプロジェクト実行委員会(前田洋三会長)は、当時の面影を残しながら観光客に喜ばれる味にしようと研究を進め、兵庫県調理師会名誉会長で古式四条流家元の中西彬さんにも相談。「現代人の舌に合う味付けで提供し、楽しんでもらうことが大切」との助言を受け、鯛を使った一品は塩麹と梅肉風味にすることなど、レシピが固まっていった。

長保寺には、代々の紀州藩主が墓参りの際の食事に使用したと伝えられる漆塗りの膳があり、徳川御膳の献上はこの膳で行われた。本堂に御膳が用意され、瑞樹住職(64)が集まった関係者の健康や発展を祈った。

徳川御膳は、今秋開催される、紀州徳川家入城400年祭に合わせてレシピの公開などを進め、本格的にPRする。

前田会長は「殿様はアワビやクエなどぜいたくなものを召し上がっていたようです。その時代と変わらない和歌山の海の幸を、観光客にも楽しんでもらえたら」と話している。

再現した「徳川御膳」を献上した調理師会メンバー

再現した「徳川御膳」を献上した調理師会メンバー