下請取引の適正化へ 県と中小企業庁シンポ
中小企業庁と県は17日、和歌山県和歌山市のホテルグランヴィア和歌山で「下請取引適正化推進シンポジウム」を開いた。昨年7月に県が経済産業省と締結した全国初の「下請等中小企業者の取引条件改善に向けた取組に関する連携協定」の取り組みの一環として共催。下請法に詳しい弁護士が基調講演し、発注元となる大手企業の担当者らが、適正化に向けた独自の先進事例を紹介した。
中小企業の経営者や営業担当者ら約430人が参加した。
弁護士の長澤哲也さんが「企業にとっての下請法とは」のテーマで講演。長澤さんは「下請法は守らされるものではない。むしろ積極的に自社で取り組むことで、公正な取引環境を自分たちのものにするための、いわばインフラと受け止めて事業発展に役立ててもらいたい」と話した。
続いて、パナソニックと島精機製作所の担当者が、それぞれの下請取引適正化へ向けた活動を紹介した。
登壇講師や県、中小企業庁の担当者らによるパネルディスカッションでは、「中小企業の公正な取引環境の実現に向けて」を演題に意見交換。
県の稲葉信・商工労働政策局長は「下請けをいじめている大企業に発展はない。また、下請けは泣き寝入りをしていては共倒れになる。改善を求める意識改革をしていくことが重要」、中小企業庁の林揚哲・取引課長は「もうかる企業は、共存共栄の理念がしっかりしている。下請法を攻めの経営理念とし、取引先をイノベーション(新製品や新資源)を生むパートナーであると考えて、共にもうかる仕組みをつくってもらいたい」などと話した。
この日はシンポジウムの他、全国事業承継推進会議(近畿ブロック)との2部構成で開かれた。
この日のシンポジウムには、世耕弘成経済産業大臣も出席。冒頭のあいさつで、県と結んだ全国初の協定について「この取り組みを和歌山モデルとして、全国各地に浸透させていきたい」と語った。
協定締結後は、経産省から県に職員を派遣し、県職員と合同で研修会を開催。県内企業へヒアリングを行い、不当な条件の取引をさせられていないかなどを調査。不当な取引慣行があればその是正につなげるなど、取引適正化に向けた取り組みを進めている。県によると聞き取り調査は2月末までで、181社を訪問したという。
世耕大臣は「『下請取引の改善なくして、経済の再生なし』との思いで、下請取引の適正化は、官房副長官時代から心血を注いで取り組んでいる政策の一つ」とし、「県内企業からは『原材料費などの上昇分を取引価格に反映してもらえるようになった』『下請取引代金の支払方法が、手形から現金に変わって資金繰りが楽になった』などの声を聞き、成果を感じている」と報告した。
その後、記者団の質問にも応じ「古くから繊維産業の盛んな和歌山では特に、いったん契約しながら代金支払いの際に値引きをする『歩引き(ぶびき)』など、独特の商習慣があり、下請企業がしわ寄せを受けやすい構造が残っている」と言及。「なかなか特効薬はないが、下請の中小企業が声を上げやすい仕組みをつくりたい。現場の状況をよくつかんでいる県と経産省が連携し、是正する取り組みを地道に続けていくことが重要」と話した。