日赤に災害医療救援セ 組織統合で対応強化
近い将来、発生が懸念されている南海トラフ巨大地震に備えて、日赤和歌山医療センター(和歌山県和歌山市小松原通)は、院内組織として、国内・国外の枠組みを超えて幅広い救援活動にあたる災害医療救援センターを設置した。これまで別個に組織されていた国内救護と国際救援部を統合することで、災害発生時には、より迅速で質の高い救護が可能になると期待されている。
設置は4月1日付。同院はこれまで、国内で発生した災害時に医者看護師、薬剤師らを派遣し、災害救護活動を行ってきた。加えて、同院は全国に91ある赤十字病院のうち、5カ所のみ指定されている国際医療救援拠点病院の一つ。災害や紛争で医療救援が必要な世界の約40カ国に、同センターから170人近い職員を派遣してきた。
それらの豊富な経験や知識を、来る南海トラフ巨大地震などの国内の災害救援に生かそうと、国内、国際の両部門の統合を決めた。
同院では海外派遣要員として21人が登録し、国内では7班(49人)の常備救護班を配置。全職員約1700人のうち、救援活動や災害訓練に積極的に参加する「災害対応協力員」に、約300人が登録しているという。今後は全職員を対象に毎月研修会を開催。国際救援に関わった職員や行政関係者らを講師に学びを深め、訓練などを重ねる。
4月中旬に行われた開設後初の研修会で、災害医療救援センターの中大輔センター長は「南海トラフ地震の発生時には、立地条件から考えても、日赤和歌山医療センターが県内の災害医療の拠点を担うことになる。これまで培った国際救援の力を国内の救護活動に貸してもらい、一体となって災害時の救援活動に尽くしたい」と意気込みを語った。
また「災害時には、誰の指揮下で動くかという指揮命令系統をしっかりしておくことが大事。その意味でも、一つのセンターを組織する意義は大きい」とし、「国際救援のメンバーは語学力に長けているので、国内での災害時、最近増えている外国人旅行者などへの対応で力を発揮してもらえるはず」と期待を寄せた。