県内札所も喜び 三十三所巡礼が日本遺産に
地域の歴史的魅力や特色を語るストーリーを認定する「日本遺産」に、和歌山県をはじめ近畿2府4県と岐阜県にまたがる「1300年続く日本の終活の旅~西国三十三所観音巡礼~」が認定された。県内からの認定は今回で5件目。全国では2019年度に16件が認定され、累計83件となった。
西国三十三所巡礼は718年、大和国・長谷寺の徳道上人が病気の際に閻魔大王のお告げを受け、三十三の宝印にしたがって開いたとされる霊場。日本最古の巡礼道といわれる。
県内には第一番札所の青岸渡寺(那智勝浦町)、第二番札所の紀三井寺(和歌山市)、第三番札所の粉河寺(紀の川市)があり、草創1300年を迎えた昨年を中心に、各寺で特別拝観や記念ご朱印の配布などのイベントが行われた。
日本遺産「1300年続く日本の終活の旅~西国三十三所観音巡礼~」は、西国三十三所の寺院など37点の文化財で構成。県内の構成文化財は、青岸渡寺(重要文化財)と六臂如意輪観音坐像(未指定)、紀三井寺(県指定)と木造十一面観音立像(重要文化財)、粉河寺(重要文化財)と千手千眼観世音菩薩(未指定)。紀三井寺は17年度認定の「絶景の宝庫 和歌の浦」に続いて、構成文化財に選ばれるのは2回目となった。
認定されたストーリーでは、日本人にとっての究極の「終活」は、ただ死に向かって人生の整理をすることではなく、人生を通して、いかに充実した心の生活が送れるかを考えることだとし、それを達成できるのが西国三十三所観音巡礼と位置付けた。さらに、日本人に対する「COOL」という海外からの評価は、優しさや心遣い、勤勉さといった日本人の本来の心であり、日本人が親しんできた「観音さん」の教えそのものだとしている。
昨年1月、滋賀県大津市を代表に24市町村が申請し、認定が実現した。認定証の交付式は東京都内で行われた。
認定を受け、紀三井寺の前田泰道貫主は「札所には世界遺産になっている寺院もある。今回は巡礼道という線でのつながりにスポットが当たった。新しく巡礼をしようという人が増えてくれたらうれしい」、粉河寺の逸木盛俊貫主は「昔から観音信仰として親しまれてきた日本最古の巡礼道の認知度が高まってくれるとうれしい。粉河寺を含め三十三所の巡礼所にお参りに来てもらいたい」と喜びを話していた。
本年度は、県が申請していた「今も息づく『語り』~絶世の美女 清姫がたどった道」と「海から始まる修行の道『葛城修験』」の2件の認定は見送られた。